これまで、幾たびか本紙上でもご紹介してきましたが、山階鳥類研究所には、世界の優れた画家による貴重な鳥類画が保管されています。山階鳥研の絵葉書でもおなじみのジョン・グールドは、博物学の黄金期とも言われる19世紀のイギリスの鳥類学者であり、その生涯を通して、沢山の美しい鳥類画を残しています。彼自身が描いただけでなく、当時の優れた絵師たちを駆使し、石版画の一枚一枚に手で色づけする手法が用いられました。 印刷技術の未熟だった当時、これらの図譜は、主に予約販売制にされており、しかも一回に数枚の図を分冊で配本し、購買者が後にそれを独自に製本するようになっていました。山階鳥研にあるグールドの鳥類図譜は、どれもインペリアルフォリオ版と呼ばれる大判の書籍で、8作品全23巻、鷹司信輔博士が、戦前イギリス留学時に買い求め、後に山階鳥研に寄贈されたものです。これらの本は貴重本として、長い年月を経ても劣化を最小限に留めるよう、温度や湿度の変化が少なく、日光の当たらない場所で保管されています。
ハチドリの美しい輝き
グールドの作品の中で、ひときわその着色が凝らされているものは「ハチドリ科鳥類図譜」でしょう。360枚の図版を伴った5巻にわたる大作で、1849年から10年以上の歳月をかけて作成されました。どっしりとした書籍の頁をめくると、姿形の様々な花々と、色鮮やかなハチドリの組み合わせに目が惹かれます。殊に、頭部やのどの金属光沢の輝きは、絵から浮かび上がるように光って見え、この部分の描写に寄せたグールドの技術的な執着が窺えます。グールドは、ハチドリが持つ、その金属味を帯びた光沢を紙上に表現したいと創意工夫を凝らし、金箔の紙の上に、透明なオイルとニスを塗る手法を使うことによって描き出したのです。
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