ロンドン動物学会報(1890年)のシュレーター氏の論文に掲載されているカンムリツクシガモ・メスの図(山階鳥研蔵)

日本鳥学会誌(1917年)に掲載された黒田長禮博士の論文。左頁の写真はメスの標本(山階鳥研蔵)
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わが国の鳥類学の草分けの研究者であり、江戸時代から博物学者の家系としても名高い黒田長禮博士(黒田所長の父上)は、1916年12月に朝鮮半島釜山近くの洛東江で採集された未知の鴨類の標本を入手した。カンムリツクシガモの第二標本である。黒田博士は1917年にこの鴨を、新種カンムリツクシガモ(Pseudotadorna cristata Kuroda)として日本鳥学会誌に発表された。この標本も雌雄不明であったが、とりあえず雄の成鳥として扱っている。黒田博士が発表した時には、27年前にこの鴨の第一標本が既に知られており、しかも雑種であると結論づけられていたことを、博士は知らなかった。
ここでこの鴨が新種であるのか、あるいは雑種なのかが問題になるのだが、江戸時代の鳥の図譜によって新種説の有力な証拠が次々に示されたのである。江戸時代の「鳥づくし」歌留多の一枚の朝鮮鴛鴦(チョウセンヲシ)がカンムリツクシガモの姿によく似ており、「觀文禽譜」の「朝鮮ヲシドリ」の記述がカンムリツクシガモの羽色とピッタリ一致することも分った。また文政6年(1823年)に北海道亀田で捕えられた雌雄の写生図も見付かった。さらには、1913年か14年に朝鮮半島で捕えられていた雄の標本が第三標本として発見されるに及んで、もはや雑種説は説得力を失った。黒田長禮博士の旧蔵した第二、第三標本が現在では山階鳥研の標本室のキャビネットの中に保管されている。(資料室長 柿澤亮三=かきざわ・りょうぞう)
山階鳥研NEWS1999年12月1日号(NO.129)より
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