所蔵名品から

第4回 鳥類画のパイオニア 小林重三

作 品
キジの雄(原画)
「日本の鳥類と其の生態 第3巻」(未刊)のために描いた図
作 者
小林重三
技 法
墨絵
大きさ
縦12.5cm×横17.2cm

大正時代から昭和時代の中頃にかけて活躍した、鳥類画家小林重三(1887~1975)は、当時出版された多くの鳥の図鑑や本に、原色図や単色画を描いています。この小林重三が描いた鳥類画の数点が、山階鳥研に保存されています。今回はそれをご紹介しましょう。

「日本の鳥類と其の生態 」の版画挿し絵の原画を描く

鳥類学者、山階芳麿の代表作のひとつに、「日本の鳥類と其の生態 全2巻」があります。この中に挿し絵として用いられている多くの図は、「木口木版」という手法で作られた単色の版画です。この版画の原画のほとんどを描いた画家が、小林重三です。また小林は、版画の原画だけではなく、数点の図版(原色および単色)も描いています。

現在は、図鑑や挿し絵が多く入った本の場合、画家の名も著者と同列に明記されるのが一般的です。しかし、当時は画家の名が表に出ることはあまりなかったようです。本書の中でも、著者が画家に指示して原画を描かせたオリジナルの図であることから、それぞれの挿し絵には「著者原図」と記されています。そして、原画を描いた画家小林重三の名は第1巻の凡例の最後に、他の鳥類学者と共に名前のみが書かれているだけです。そのため、画風から小林を知っていても、画家として小林重三を知る人は決して多くはなかったことと思います。

 

「日本の鳥類と其の生態 第2巻」(396ページ)挿し絵のツバメ
左は木版画で、右がその原画(ペン画)

出版されなかった第3巻以降の原画

当初、本書は第1~3巻を旧北区の部、第4巻を東洋区の部、第5巻を豪州区の部としてそれぞれ出版する予定でした。ところが、第2次世界大戦の影響で、第1・2巻が出版されたのみで、本書は完成には至りませんでした。しかし、小林は未刊の巻について、すでに数点の版画の原画と原色図を描いていたのです。今回ご紹介したキジの原画もそのひとつです。なお、他の多くの原画はツバメの原画のようにペンで描かれていますが、このキジの画は墨で描かれています。山階鳥研には第1・2巻の原画の一部とともに、明らかに本書のために描いたと思われる、当時日本が委任統治を行っていた南洋諸島地域の鳥を描いた、原色図や版画の原画の一部が保管されています。

小林重三はまた、当時出版された様々な動物関係の本や雑誌に、鳥だけでなく、日本の哺乳動物やウマやウシ、ニワトリなどの家畜、セキセイインコやジュウシマツといった飼い鳥も描いています。同氏は日本の多くの動物の研究者に信頼された、当時を代表するいわば「売れっ子」の動物画家だったのではないでしょうか。
 なお、画家小林重三についての詳しいことは、以下の参考資料をご覧ください。 (資料室図書担当 鶴見みや古=つるみ・みやこ)

山階鳥研NEWS 1999年7月1日号(NO.124)より

  • 【参考資料】
  • 『鳥を描き続けた男  鳥類画家 小林重三』国松俊英著(1996年 晶文社発行)
  • 『特別展図録 鳥類画家 小林重三』(1994年 平塚市博物館発行)

▲ このページのトップへ