読み物コーナー

2018年8月29日掲載

動物の個性への興味から鳥類学へ

山階鳥研 保全研究室 研究員 油田照秋

2018年4月から山階鳥研に就職した油田照秋さんに自身の鳥類学的生い立ち、研究者としての経歴を語ってもらいました。

山階鳥研ニュース」2018年7月号より

今年度から山階鳥類研究所保全研究室に着任しました油田照秋(ゆたてるあき)と申します。今後、鳥類標識調査事業やモニタリングサイト1000事業など幅広く活動していく予定です。今回は、自己紹介に代えて私が鳥の研究を始めた経緯とどんな調査研究をしてきたか、などをお話しさせていただきます。

なぜ自分が動物に興味を持ちその後鳥を研究するに至ったかを考えると、ルーツは幼少の頃実家で飼っていた動物たちに行きつきます。茨城県つくば市の田園でイヌやネコ、ヤギから周辺の川などで捕ってきたクサガメやコイ、ブラックバスなど、鳥類ではチャボ、ウコッケイ、レグホンなどのニワトリやドバト、セキセイインコなどを人からもらって飼育していました。動物好きとして育ったのはもちろんですが、家族の話では、私は中でもニワトリ好きで雛が孵化すると小屋の前に座って親鳥や雛を何時間も眺めていたそうです。多くの動物を飼育した経験から、私は特に個体ごとの個性や種、分類群の特徴とその不思議に興味を持ちました。その興味はその後「適応」という言葉を使って行動学や進化学で理解したいと思うようになったのです。つまり、動物たちの多様性やそれぞれの違い、特徴はどのように生存や繁殖に影響し、進化の過程で維持されてきたのか、を知りたいと考えました。

初めて本格的に鳥類の調査研究に携わったのは、大学卒業後に山階鳥類研究所の調査アルバイトとして参加した小笠原へのアホウドリの新繁殖地形成事業でした。この時に実際に野生動物を間近で観察しながら保全活動や調査、研究を経験し、その楽しさと難しさ、やりがいを感じたことが、その後北海道大学大学院に進学し鳥類の研究を始めるきっかけになりました。北海道大学では、巣箱を使ったカラ類、特にシジュウカラの繁殖生態の研究をしていました。調査地のあった北海道苫小牧市の森ではシジュウカラ以外にもヤマガラ、ヒガラ、ハシブトガラのカラ類とゴジュウカラなどが巣箱で営巣しました。苫小牧は他にコガラも繁殖しており、同所的に5種のカラ類が繁殖する世界的にも珍しい場所です。

巣立ち直前のシジュウカラの雛。北海道のシジュウカラは一腹卵数(一回の繁殖で産む卵数)が多く(平均で10個以上)、多くのペア(半数以上)がシーズン内に複数回繁殖するなどの特徴があった。

その後2015年からの3年間は新潟大学に所属し新潟県佐渡市で、日本の絶滅危惧種の象徴で、日本の保全の象徴でもあるトキの保全生態の研究に取り組んできました。トキは2008年から飼育個体を放鳥する再導入による野生復帰を目指していますが、第一回放鳥以来生き延びて観察されている個体もいますし、放鳥後すぐに消息不明になってしまった個体もいます。また毎年繁殖を成功させる個体もいれば、毎年失敗してしまう個体もいます。これらの個体はどんな経歴でどんな特徴があるのか、などを研究してきました。

日本の里地里山の自然を象徴するトキ。2008年から人工飼育個体の放鳥が行われ、2012年からは野生下での繁殖も成功している。現在(2018年6月)は約300羽(野外生まれ個体はそのうち約半数)が佐渡島の空を飛び、水田で餌を探し、屋敷林などで営巣している。

今後山階鳥類研究所では、これまでのように「適応」という言葉の下、行動学や進化生態学の考え方を持ちながら、標識調査などで得られる鳥類全体の動態などに視野を広げて調査研究に取り組んでいきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

(文・写真 ゆた・てるあき)

>>油田研究員紹介ページ

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