研究・調査

日本最大の鳥学関連資料群の
維持管理・拡充・公開に関する研究事業

2016年6月24日掲載

山階鳥研では、文部科学省科学研究費補助金(特定奨励費)を受けて、平成27(2015)年度から「日本最大の鳥学関連資料群の維持管理・拡充・公開に関する研究事業」に取り組んでいます(注1)。そのあらましについてご紹介します。

「山階鳥研NEWS」 2016年5月号より)

山階鳥研は、前身の山階家鳥類標本館から数えて80年あまり、一貫して鳥学関連資料の収集に努め、国内外における鳥学ならびに関連分野の発展を支え続けてきました。たとえば、国内最大の約7万点の標本資料は、約1万種を数える世界の鳥類種のほぼ半数をカバーしています。また、鳥類の観察記録として、鳥類標識調査(注2)の、1924年の農商務省による開始以降の550万件のデータとそれに付随するカード類、日誌類が山階鳥研に保管されています。こういった点から、山階鳥研は、鳥学および関連分野を研究する国内外の研究者にとって欠くことのできない研究拠点になっています。この研究事業は、これらの資料群の適切な維持管理、拡充を行うとともに、積極的な情報公開によって、そこから得られた成果を社会に還元することを目指すものです。

資料群の維持管理

標本庫、書庫について温湿度管理、害虫・カビ等のモニタリングや発生時の対応など、また未整理の標本や組織サンプル(注3)、図書の整理・付番・配架、標識調査関連の紙資料の電子化、国内外の研究者からの資料利用への対応などを行います。

資料群の拡充

新規作成、寄贈の受入れ、交換、購入等により標本を拡充し、組織サンプルも同様に拡充します。図書も寄贈、交換、購入等により増やします。さらに標本関係では、鳥体内部構造のX線CTデータ(注4)、羽毛の走査電子顕微鏡画像データ、羽毛の紫外線画像データを撮影により集積し、また、DNAバーコーディングデータ(注5)も集めます。鳥類の繁殖状況の長期的変化を明らかにするために2011年から開始した鳥類の繁殖モニタリング調査(注6)のデータを収集します。

情報公開

ウェブサイト「標本データベース」と「蔵書検索システム」を運営し、「山階鳥類学雑誌」を年2回刊行します。標本および組織サンプルの収蔵状況についての情報、鳥体内部構造のCT画像、羽毛の走査電子顕微鏡画像、羽色の紫外線画像を標本データベースに、図書についての情報を蔵書検索システムに追加してゆきます。DNAバーコーディングデータを、国際バーコードオブライフプロジェクト(注7)のデータベースに登録します。繁殖モニタリングデータは「山階鳥類学雑誌」に掲載します。

さらに普及啓発活動として、野外調査講習会と標本作製講習会を開催(注8)し、山階鳥研の所員が一般向けに鳥学の知識を易しく解説する講演会(「テーマトーク」)を我孫子市鳥の博物館で開催します。

以上の計画は、文部科学省に認められ、平成27(2015)年度は総額5千6百万円で執行されました。

この研究の自己評価のための総括班の委員を、星元紀(座長・放送大学教授)、青木清(上智大学名誉教授)、石居進(早稲田大学名誉教授)、岩槻邦男(東京大学名誉教授)、遠藤秀紀(東京大学教授)、奥野卓司(関西学院大学教授)、川那部浩哉(京都大学名誉教授)、進士五十八(東京農業大学名誉教授)、西海功(国立科学博物館研究主幹・日本鳥学会会長)、早川信夫(NHK解説主幹)、陽捷行(北里大学名誉教授)、山岸哲(兵庫県立コウノトリの郷公園長)、和田英太郎(前海洋開発機構特任上席研究員)の各氏にお願いしています。

(注1)文部科学省科学研究費補助金(特定奨励費)による研究活動として、これまで、「希少鳥類の生存と回復に関する研究」(平成13年度〜16年度)、「日本産鳥類資料の整備と活用に関する研究」(平成17年度〜平成20年度)、「山階鳥類研究所データベースシステムの構築と公開」(平成21年度〜平成26年度)を行ってきました。

(注2) 野鳥に個体識別用の足環等を装着することで、鳥類の渡りや寿命などのさまざまな生態を明らかにしようとするもので、日本では現在、環境省の委託事業として山階鳥研が実施しています。

(注3) 組織サンプル ここでは、DNAの抽出などを目的に保存した筋肉の小片などの組織。

(注4)CT Computed Tomography コンピュータ断層撮影 物体にX線を照射して得た画像を、コンピュータで処理して、物体の断面図や三次元画像を得る技術。

(注5)DNAバーコーディング DNA barcoding 種の違いを反映するような、特定の遺伝子領域の短い塩基配列を解読することで、微小なサンプルからでも生物種の同定を可能にする技術。

(注6)東日本大震災に伴う原子力発電所事故で放出された放射性物質が鳥類の繁殖成績に及ぼす影響を長期的にモニタリングするため、アメリカ合衆国の同様の事業をモデルとして山階鳥研が開始したもの。福島県内3ヵ所と三陸沖1ヵ所について、捕獲方法と努力量を一定に保った調査を繁殖期に実施します。

(注7)すべての真核生物についてDNAバーコードの完備を目指す国際プロジェクト。公式ウェブサイト

(注8)それぞれ「山階鳥学セミナー(捕獲技術入門編)」と「鳥類標本製作技術講習会」として昨年度(平成27年度)から開始しました(山階鳥研NEWS」3月号参照)。


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