鳥類標識調査

仕事の実際と近年の成果

2021年3月10日掲載

コアホウドリがメキシコから飛来 足環付きの個体を茨城県で回収

2020年3月15日に、茨城県神栖(かみす)市波崎(はさき)の海岸で死体拾得されたコアホウドリが、装着した足環から、メキシコ領の太平洋上のグアダルーペ島で巣立った個体であることがわかりました。

今回、メキシコでコアホウドリの調査をしている団体から、メキシコでの生息状況と保全活動について寄稿いただきましたので合わせてご覧ください。 → 「メキシコのグアダルーペ島生物圏保護区におけるコアホウドリの現状」

山階鳥研ニュース」2021年3月号より

この個体は、GPE05830という刻印の金属足環、左足に橙色地に青い字で6W4という刻印のあるプラスチック製の色足環を装着しており、金属足環に刻印されたメールアドレスから、メキシコの島嶼(とうしょ)生態系保全グループ(Grupo de Ecología y Conservación de Islas, A.C., GECI)という団体が装着したものと考えられました。

茨城県で回収されたコアホウドリ

茨城県神栖市波崎の海岸で死体拾得されたコアホウドリ。右足に金属足環、左足に、6W4という刻印のある色足環が見える。

同団体への問合せの結果、この個体は、メキシコのカリフォルニア半島沖の太平洋上にあるグアダルーペ島の属島のサパト島で、2018年2月に孵化した個体で、ヒナのうちに足環を装着され、6月に巣立ったことがわかりました。この個体の放鳥地から回収地までの移動距離は、9,070キロメートルあまりになります。野鳥の移動がメキシコと日本との間で確認されたのは、これまで日本で放鳥したオナガガモがメキシコで回収された例があるだけで、今回が2例目です。

コアホウドリは北太平洋に分布する海鳥で、日本では小笠原諸島聟島(むこじま) 列島で少数が繁殖しますが、種としての主な繁殖地はハワイ諸島とミッドウェー諸島で、両諸島と日本との行き来を示す足環の回収例は、2019年までで108例あります。本種のメキシコでの繁殖は1983年に始まり、近年個体数が増加しているとのことです。

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