鳥類標識調査

仕事の実際と近年の成果

2020年9月9日掲載

鳥類標識調査でアオジが福井県から韓国に渡ったことを初めて確認しました。

2019年10月に福井県で足環をつけて放鳥された、ホオジロ科の小鳥、アオジが、2020年3月に韓国の朝鮮半島の南東端に近い島で再捕獲されました。アオジの日本と韓国の間での移動が確認されたのは初めてです。

山階鳥研ニュース」2020年7月号より

韓国慶尚南道統営(トンヨン)市の小毎勿島(ソメムルド)で捕獲、足環が確認されたアオジ(上)と足環(下3点)。足環には「KANKYOSHO JAPAN 2AM-19519」という刻印がありました。2020年3月3日(写真提供:Gil-Pyo Hong)。

このアオジは、韓国慶尚南道統営(トンヨン)市の小毎勿島( ソメムルド・対島の西約70キロメートル)において、3月3日に再捕獲されました。確認された日本の足環から、この個体は2019年10月24日福井県敦賀市中池見(なかいけみ)で、山階鳥研の協力調査員の古園(こその)由香さんによって、雌・幼鳥として標識足環をつけて放鳥された個体であることが判明しました。放鳥地から回収地までは直線距離にして約690キロメートルとなります。

今回判明した移動

アオジは日本(本州中部以北)や極東ロシア南東部で繁殖し、日本南部、中国南部等で越冬するとされています。しかし、複数の亜種(同じ種の中の、地理的に区別されるグループ)に分かれていて、それぞれの越冬状況や渡り経路はよくわかっていません。アオジは日本の鳥類標識調査においてもっとも多く足環標識が付けられている種類で、これまで国内の移動記録は約3,300例得られていますが、国外との移動記録はロシアとの間で24例あるのみでした。

今回の記録は、種としてのアオジのうち、サハリンや日本(本州中部以北)などで繁殖する亜種アオジが、繁殖地で巣立った後、秋に福井県を通過して越冬地に至り、翌春、北上の途中で韓国南岸の島を訪れた証拠であり、日本産鳥類の渡りの生態を知るうえで貴重なものとなりました。

鳥類標識調査は、カスミ網などを使って、鳥類を捕獲し、個体識別用の足環を装着して放鳥し、渡りや寿命などの様々な生態を明らかにする目的で実施されています。近年では、鳥類生息状況のモニタリングのためにも活用されています。日本では現在、環境省の委託事業として、山階鳥研が、多くのボランティアの協力も得て実施しています。

※ この研究について、5月15日にプレスリリースを行いました。山階鳥研プレスリリースのページから資料がご覧いただけます。

※ 1961年以来の鳥類標識調査によって判明した鳥の渡りの記録を、パソコン上で地図表示できる鳥類アトラスWeb-GIS版等が、環境省生物多様性センターのウェブサイトに公開されています。ぜひ合わせてご覧ください。http://www.biodic.go.jp/birdRinging/index.html

このページのトップへ