鳥類標識調査

仕事の実際と近年の成果

2015年4月9日掲載

日本で越冬するツリスガラの繁殖地判明

鳥の渡りや寿命などの生態解明のために足環などを装着して行っている鳥類標識調査で、日本で越冬するツリスガラの繁殖地の情報が初めて得られました。

「山階鳥研NEWS 2014年11月号」より

今回、ロシアで発見されたツリスガラの個体は、2013年2月10日に鹿児島県出水(いずみ)市の環境省出水鳥類観測ステーションで茂田良光研究員が捕獲し、足環を装着して、雌の第一回冬羽として放鳥した個体で、今年5月22日にロシア沿海州のハサン地区ザルビノ港付近で、極東連邦大学動物学博物館(ウラジオストク)の鳥類研究者オレッグ・ブルコフスキイ氏によって再捕獲され、足環番号1F-53212が確認されました。同博士によるとこの個体は繁殖地において巣内で捕獲されたとのことです。

図1 今回判明したツリスガラの移動

ツリスガラはユーラシア大陸で繁殖するツリスガラ科の小鳥で、日本ではおもに西日本を中心にアシ原などに冬に渡来します。茂田良光研究員は、「日本に渡来するツリスガラで海外との往来が足環で確認された事例としては、従来、渡りの中継地と考えられる朝鮮半島との間での記録があるのみで、今回の記録は本種の繁殖地が初めてわかった事例として貴重です。今回の例は1例ですので、今後新たな回収例が増えて繁殖地の全体像が判明することが望まれます。」と述べています。

写真1 再捕獲された個体
(写真提供:オレッグ・ブルコフスキイ氏)

山階鳥類研究所は鳥類の生態解明のための鳥類標識調査(バンディング)を、環境省の委託を受けて行っており、日本でのセンターになっています。

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