読み物コーナー

2017年5月10日掲載

夜行性のため野外ではなかなか見ることができないフクロウ。我孫子市鳥の博物館では、山階鳥研の協力のもと、我孫子市内の山林にカメラつきの巣箱を設置してフクロウの子育てを観察し続けています。10年におよぶ観察から見えてきた生態や食性をはじめ、子育てを通してわかるフクロウの魅力について、同博物館の村松和行さんに寄稿していだきました。

「山階鳥研ニュース」2016年5月号より)

巣箱観察にみるフクロウの子育て

我孫子市鳥の博物館学芸員 村松和行

フクロウの親子(2011年4月28日撮影) 我孫子のフクロウは2〜3個の卵を産む。抱卵日数は約30日、ふ化から巣立ちまで約30日で約2ヶ月間巣箱を利用する(写真のヒナはふ化後12日)。

山階鳥類研究所の隣にある我孫子市鳥の博物館で、フクロウの子育ての観察をはじめて約10年が経ちました。

研究所の協力を得て、過去にフクロウが巣箱で営巣したことがある市内の林に、カメラつきの巣箱を新しく設置したのが始まりで、その後、ほぼ毎年営巣が確認されています。

フクロウは誰もが知っている鳥ですが、夜行性のため、実際に野外で姿を見たことがない人も多くいます。そこで博物館では、その生態について知ってもらうため、巣箱の観察記録を教育普及活動に利用しています。

また、多くの人にフクロウについて関心を持ってもらえるように、博物館のウェブサイトで巣箱内の映像を公開配信しています。

フクロウの巣箱はOBIS(遠隔監視用映像記録システム)を利用することで、長期にわたり継続して画像データを蓄積しています。それにより、非繁殖期にも巣箱を訪問していることが明らかになりました。また、巣箱で繁殖しなかった年でも通年の訪問が観察されました。我孫子のフクロウは3月から6月の間に巣箱を利用し、産卵から巣立ちまでは約2ヶ月です。巣箱に取り付けたマイクからは、餌の受け渡しの合図やヒナの餌乞いなど、様々な鳴き声によるコミュニケーションをとって子育てをしていることが確認されています。

ヒナがふ化すると親鳥は忙しく餌を運んできます。巣箱周辺は住宅地なので、フクロウはドブネズミやスズメなど人家周辺に生息する動物を多くヒナに与えており、最も給餌回数が多かったのはニホンヤモリでした。ニホンヤモリは主に人家の灯りに集まる昆虫類を食べることから、我孫子のフクロウは林のような自然環境だけでなく、電柱や建物の周辺など人工的な環境でも餌を探していると考えられます。我孫子のフクロウは、餌動物を見る限りでは都会派と言えるのかもしれません。

フクロウの巣箱を通して皆さんに地域の環境や生態系に興味を持ってもらうため、博物館では今後も観察を続けて行く予定です。

(文・写真 むらまつ・かずゆき)

(注)巣箱カメラは多くの方々に身近な鳥を知ってもらう事を目的に、野鳥の生態に考慮し出来るだけ影響を与えぬよう細心の注意を払って設置しています。個人の興味だけでむやみに巣箱カメラを設置することは、野鳥の生態に悪影響を与える恐れがありますので十分にご配慮ください。

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