オオミズナギドリの繁殖地 御蔵島
ノネコ里親プロジェクト

2016年1月12日更新

岡奈理子上席研究員は、オオミズナギドリの世界最大の繁殖地である伊豆諸島・御蔵島(みくらじま)で、同種の繁殖集団に影響を与えているノネコ問題に取り組み、2015年2月から御蔵島村と連携してノネコの捕獲と持ち出しに向けた活動を行っています。島外に持ち出したノネコの里親も募集しておりますのでご協力をお願いいたします。

目次

今年も子ネコの里親を募集しています

里親に貰われるのを待つネコたち

御蔵島は東アジア固有の海鳥オオミズナギドリの世界最大の繁殖地であり、小笠原諸島とともに東京都のエコツーリズムの島に認定されています。近年、御蔵島では人が持込んだネコの子孫が野外で繁殖する「ノネコ」が増え、オオミズナギドリや、島で進化した固有な動物に脅威となってきました。

山階鳥研の岡上席研究員は、急減し続ける御蔵島のオオミズナギドリを守るために、ノネコの島外持ち出しプロジェクトを行っています。昨年は捕獲された30頭のうち若いノネコ13頭を島外に持ち出し、名乗り出て下さった里親の方々にお渡ししました(本紙2015年1月号5月号参照)。島ではノネコを一時飼育する待機所もできました。

今冬からは東京都獣医師会が御蔵島のノネコ持ち出しを始めます。同会では先行する小笠原諸島からのノネコ持出し数も多く、受け入れ先が不足します。そのため今年も引き続き御蔵島のノネコの里親を募集します。関心がある方は下記連絡先の岡までご連絡下さい。

  • <連絡先>
  • 山階鳥類研究所 自然誌研究室 上席研究員 岡奈理子(おか・なりこ)
  • 電話: 04-7182-1101 FAX: 04-7182-1106
  • E-mail: oka☆yamashina.or.jp
  • (メール送信の際は☆を小文字の@に変えてください。)

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東アジア特産の海鳥 オオミズナギドリの繁殖地
御蔵島でノネコの島外持ち出しプロジェクトが始動

御蔵島は、東アジア固有の海鳥オオミズナギドリの世界最大の繁殖地として知られ、1970年代には175~350万羽が生息したと報告されています。しかし2012年夏には総繁殖数は80万羽を切り、その前5年間と比べても12%が減少し憂慮されてきました。その原因として、持ち込まれたネコが野外で繁殖したノネコによる食害が指摘されています。岡上席研究員の試算によると、同島内にノネコは約500頭生息するとみられ、オオミズナギドリの繁殖期の9ヶ月間に主に親鳥を捕食し、秋にはヒナも捕食していると考えられます。さらにノネコの繁殖によって、ミクラミヤマクワガタ、オカダトカゲ、カラスバト等の固有あるいは希少な種も大きな影響を受けていると考えられます。

御蔵島村では2005年秋以来、合計389頭のノネコの捕獲・不妊去勢手術を行ってきましたが、島外へ持ち出せたネコはごくわずかに過ぎず、ほとんどのノネコは手術後、島内に再度放獣されてきました。ノネコを島外に持ち出すことができれば、御蔵島の自然環境をいっそう早く従来の状況に戻し、希少動物の減少や絶滅を食い止めることができますが、島外に持ち出すためには、本土側でのネコの受け入れ体制が必要です。

希少種が生息する島嶼でのノネコの島外持ち出しは、小笠原諸島で地元NPO法人が他機関と協力して先駆的に行っており、そのうちの父島では約10年の歳月をかけてほぼノネコを島から出し終えたところですが、それと共に、これまで絶滅が心配された固有亜種のアカガシラカラスバトの繁殖集団が復元されつつあります。

このたび、岡奈理子上席研究員は、御蔵島村、(公社)東京都獣医師会などと協力して、小笠原諸島の事例にならったノネコの島外持ち出しプロジェクトを開始することになりました。ノネコは、オオミズナギドリが繁殖のために島にいる3月から11月まではほとんどかごワナに入らないため、オオミズナギドリが島にいない厳冬期の2月に集中して捕獲します。昨年は新たに捕まえた約40頭のうちの約半数が子ネコでした。現在、2月の捕獲に向けて、ノネコの持ち出しシステムづくりを始めています(子ネコの里親募集はこちらをご覧ください)。

このプロジェクトはアウトドア自然保護基金と、(公財)自然保護助成基金のプロ・ナトゥーラ・ファンドを受けて実施しています。

『山階鳥研ニュース』 2015年1月号より

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オオミズナギドリと島の生態系の保全活動

世界最大のオオミズナギドリの繁殖地がある伊豆諸島・御蔵島で急増したノネコに取組む岡 奈理子上席研究員に、最新の活動と経緯を報告してもらいました。

山階鳥研 上席研究員 岡奈理子

オオミズナギドリ親鳥

オオミズナギドリの親鳥

突然起こったノネコの島化現象

鳥類の絶滅の多くは、肉食哺乳類が皆無だった島に、狩りの名手が持込まれて起こることは広く知られています。今、伊豆諸島の御蔵島では、この脅威が現実のものになりつつあります。

御蔵島遠景

御蔵島の遠景

御蔵島を初めて訪れた1970年代後半以後、私はオオミズナギドリの集団繁殖地でノネコを見ることはありませんでした。が、近年、異変が起こりました。多様な毛色のノネコと、鳥の死体が、繁殖地に寝泊りする私の目に幾度も飛び込んでくるようになったのです。もともと飼い猫の子孫が野生化したのがノネコです。思い余って箱ワナで捕らえ村役場に運んだのが2005年。集落では鶏小屋がノネコに襲われ全滅した年でした。

ノネコ被害

オオミズナギドリの首無し死体。若ネコの狩猟の練習とみられる。ノネコの糞に羽毛も混じる(写真右下赤枠内)。

始まったノネコ対策

これを皮切りに村役場でノネコの捕獲が始まりました。10年間で不妊去勢した数は約4百頭。しかし引き取り先がなく再び島で放されてきました。長寿命な動物だけに生涯、島の野生動物に脅威となり続けます。

なんとかノネコを島外に出せないものか。

私は役場担当者が保管するノネコ捕獲データを分析し、現状と見通しを役場に説明し、東京都獣医師会などに協力を要請しました。そして昨年、再放獣から島外持出しへ舵(かじ)を切る合意ができました。

島を出るノネコ第1陣

今年2月、村役場のノネコの一斉捕獲・不妊去勢活動に合流しました。子ネコを対象に島からノネコの持出しを試行しました。

2週間で捕まったのは計30頭。このうち約半分は人が近づくと牙を出し威嚇する野趣な成獣でした。これらは不妊去勢後に島に放されました。しかし残りの14頭は3~8ヶ月齢の若いノネコです。島の自然もネコもどちらも好きな賛同者や、里親を呼びかけてくれた全国紙などの協力を得て、里親をみつけることができました。島民の飼い猫になった1頭を残し、フェリーで本土に渡った13頭は、関東周辺の方々や、最も遠くは新幹線に乗って兵庫県在住の方にもらわれて行きました。この数は新規捕獲数の約半分に当ります。

東京港

東京港にお集まり下さった里親の方々の前には、御蔵島のノネコが入る篭がずらり。

今後に向けて

次のステップはノネコ持出しシステムを作ることです。御蔵島発着船は、桟橋が波をかぶる冬季には定期運行をあてにできない状況になります。その間ネコを飼う施設と島民の協力が不可欠です。里親となって支援下さる方を見つけられなければ、持出しそのものが成り立ちません。

ノネコ

筆者の自宅で里親を待つ2頭のノネコたち(爆睡中)。

今回のノネコ持出し活動にご協力下さった方々へ感謝しつつ、今後も関心を持ち続けていただき、里親探しにご協力いただける方々のご支援をお待ちしています。

(文・写真 おか・なりこ)

『山階鳥研ニュース』 2015年5月号より

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