研究・調査

山階鳥類研究所データベースの構築と公開
ー18世紀末から現在に至る鳥類相の変化をもとに
その未来を予測する

2013年5月2日更新

山階鳥類研究所では、文部科学省科学研究費補助金(特定奨励費)を受けて、平成24(2012)年度から、「山階鳥類研究所データベースの構築と公開ー18世紀末から現在に至る鳥類相の変化をもとにその未来を予測する」に取り組んでいます。(注1

(山階鳥研NEWS 2013年5月号より)

生物多様性が人類にはかり知れない恩恵を与えていることが理解されるようになりましたが、一方で人類が生物多様性に危機をもたらしていることも現代の共通の認識となっています。この生物多様性を守るために、これまでの生物相の変遷過程の正確な把握が欠かせないところです。

標識調査の様子

標識調査は、現在、約450人を越えるボランティア協力調査員の協力のもと行われ、毎年15〜17万件のペースでデータが追加されている。

この研究では、山階鳥類研究所の所蔵する約7万点の標本資料と500万件の鳥類標識調査データ(注2)をもとに、生物多様性の過去から現在に至る傾向を明らかにすることを目指します。このデータ整備により、急速に失われつつある生物多様性の保全に貢献するとともに、生物多様性そのものに知的関心を抱く関連学術分野の振興を図りたいと考えています。

X線CT

X線CT(コンピュータ断層撮影)で骨格の三次元データを取得する。

平成24年度からの3年間の計画として、これまで集積した資料の維持管理と拡充に努めるとともに、(I)分布・個体数データ、(II)形態データの整備と情報発信に取り組みます。(I)では標識調査データを軸に、標本のラベルデータも含めてデータベースの構築を進め、これにより、アジア・オセアニア地域の鳥類の分布の変遷の過程を明らかにします。(II)では、標識調査に付随してとられている鳥類の計測値データのデータベース化、X線CT(コンピュータ断層撮影)や三次元レーザースキャナ等による所蔵標本の三次元形態データのデータベース化、同じく所蔵標本から取得する色彩データのデータベース化に取り組みます。これらを配信するデータ配信サイトを構築し、全世界の研究者が利用できるようにすることで、生物多様性の保全ならびに、関連の諸分野の研究の振興に資することができると考えています。

ハシブトガラス頭骨

ハシブトガラスの頭骨の三次元形態デジタルデータ

この研究のために、4つの班、すなわち、総括・研究調整会議(研究責任者・林良博所長)、資料の収集と維持管理(同・齋藤武馬研究員)、分布・個体数データ(同・出口智広研究員)、形態データ(同・山崎剛史研究員)、情報発信(同・浅井芝樹研究員)を編成して取り組んでいます。

(注1)これまでこの特定奨励費を受けて、「希少野生動物の生存と回復に関する研究」(平成13〜16年度)、「日本産鳥類資料の整備と活用に関する研究」(平成17〜20年度)、「山階鳥類研究所データベースシステムの構築と公開」(平成21〜23年度)を行ってきました。現在行っている研究は平成23年度まで行った研究の継続と発展を目指すものです。

(注2)捕獲した野鳥に足環をつけて放し、再捕獲などによって移動や年齢などのデータを収集しようとする調査で、環境省から山階鳥研が委託を受けて実施しています。従来の目的に加えて、近年は環境の変化などを把握する利用法が注目されています。


このページのトップへ