研究・調査

2017年3月29日掲載

ダチョウ、エミュー、レアの祖先は小さな飛べる鳥だった
絶滅した巨鳥・エピオルニス(象鳥)の祖先は
マダガスカルに渡ってから巨大化した
エピオルニスの古代DNAを分析して判明

米澤隆弘・復旦大学生命科学学院副教授らの研究チームは、マダガスカルの絶滅した巨大な鳥、エピオルニス(象鳥)の古代DNA(注1)解析により、この鳥を含めたダチョウなどの飛べない鳥のグループである走鳥類全体の進化のあらすじを解明しました。この研究は、2003年に総裁の秋篠宮殿下が中心となられて立ち上げられた「象鳥の総合的研究チーム」のプロジェクトのひとつとして始まったもので、秋篠宮殿下も共著者のお一人です。山階鳥研から、山岸哲・名誉所長、林良博所長のほか、特任研究員の遠藤秀紀・東京大学総合研究博物館教授、長谷川政美・復旦大学教授が参加しています。

現生のダチョウ(アフリカ)、エミュー類(オーストラリア)、レア類(南アメリカ)、キーウィ類(ニュージーランド)、ヒクイドリ類(ニューギニア・オーストラリア)はいずれも動物園でも人気のある、互いによく似たグループで、走鳥類と呼ばれています。

走鳥類は、それぞれが南半球の大陸ごとに生息していて、どのような進化の道筋を経てこれらの鳥たちがそれぞれの地域に分布するようになったのかは、古くから生物学者の関心の的となってきました。これまで有力視されていた学説は、南半球の超大陸ゴンドワナにすでに飛べなくなった共通祖先が生息していて、ゴンドワナ大陸が、インド亜大陸、アフリカ、南アメリカ、オーストラリアなどに分裂したためにダチョウ、レア、エミューなどのそれぞれの地域の走鳥類に分化したというものでした。

こういったシナリオの検討にあたって鍵を握るのが、絶滅した走鳥類で、人類の出現以降に絶滅した、エピオルニス類(マダガスカル)やモア類(ニュージーランド)という巨大鳥類の位置づけいかんで、想定される進化の道筋が変わってきますが、エピオルニスの古代DNA塩基配列の読み取りが技術的な制約から進んでおらず、はっきりした位置づけが不明でした。

エピオルニスと長谷川先生

写真 左)エピオルニス類の最大種エピオルニス・マキシマスの骨格標本と長谷川政美教授。マダガスカルのエピオルニス科はおよそ2千年前に人類がマダガスカルに渡来して以降に絶滅した。 右)ダチョウ(写真提供:長谷川政美教授)

研究チームは、次世代シーケンシング(注2)とバイオインフォマティックス(生物情報学)という、近年発達してきた新技術を駆使してエピオルニス類の古代DNAの読み取りを行い、これまでに得られていた、走鳥類を含む古顎類(こがくるい)(注3)のデータをあわせて解析し、古顎類の間の進化の道筋と、いつごろ枝分かれしたかを推定しました。その結果、エピオルニス類はニュージーランドのキーウィ類と最も近縁であることが判明しました。

今回わかった、マダガスカルとニュージーランドに分布する飛べない鳥が地史的に最近分化したという進化の道筋と、これまで解明されている大陸移動の歴史の知見から、あわせて古顎類全体の進化についてのこれまでの通説と違ったシナリオが明らかになりました。

これによると、北半球の新生代初期の地層から見つかる古顎類の、小さなリトルニスの仲間が現生の古顎類の祖先で、彼らには飛翔力がありました。彼らは北アメリカから南アメリカへ当時のパナマ海峡を飛んで移動しました。南アメリカは南極を介してオーストラリアともつながっていたので、彼らはさらに分布を広げ、白亜紀~古第三紀に爆発的に分化しました。さらにニュージーランドやマダガスカルといったゴンドワナ大陸が分かれた陸塊にも南極から海を渡って到達し、それぞれの地で巨大化したと考えられます。

「山階鳥研NEWS 2017年3月号」より

この研究の成果は、左記論文に発表され、2016年12月15日に国立科学博物館から報道発表が行われました。

Yonezawa et al. 2016. Phylogenomics and morphology of extinct paleognaths reveal the origin and evolution of the ratites. Current Biology, DOI: 10.1016/j.cub.2016.10.029.

(注1)生物の種の進化の歴史の解明のために、遺 伝情報の本体であるDNAが用いられます。生物の細胞にあるDNAは生物が死ぬと壊れて断片化してゆきますが、技術の進歩によって、場合によって化石からもDNAを取り出すことができるようになってきました。こういった「古代DNA」を分析に用いることにより、これまで分からなかった進化の道筋がわかるようになりました。

(注2)次世代シーケンシングは、断片化した大量のDNAの塩基配列を同時並行的に読み取ることができる技術で、これまでの分析技術に比較してはるかに高い解析能力を持っています。

(注3)走鳥類に南アメリカ産で飛力のあるシギダチョウ類を加えたグループは、顎の骨の解剖学的特徴などから、古顎類というひとまとまりのグループとされ、その他のすべての現生鳥類が属する新顎類と区別されます。

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