2011年 新年のご挨拶

2011年1月1日掲載

賛助会員の皆様、また日頃より山階鳥類研究所をご支援頂いております皆様、あけましておめでとうございます。

昨年4月に山岸哲名誉所長から本研究所の所長を引き継ぎましてから9ヶ月間。昨年は国連の生物多様性年であり、COP10(国連生物多様性条約第10回締約国会議)が10月に名古屋で、また兵庫県豊岡市で第4回「コウノトリ未来・国際かいぎ」が開催された年でしたので、あっというまに過ぎ去った9ヶ月間でした。しかし、そうしたイベントが開催されたために、これまで馴染みの薄かった「生物多様性」という言葉が日本国内に定着したことは喜ばしいことです。

自然誌研究室と保全研究室に改組された本研究所も、新しい体制が本格的に始動し、引き続き文部科学省から科学研究費補助金(特定奨励費)を受けて、7万点の貴重な標本を対象にした基礎研究と、環境省から委託を受けた希少鳥類の保全研究が着実に前進しております。すなわち前年度に引き続き、昨年も鳥島から聟島へ移送されたアホウドリの雛15羽が人工給餌を受けてすくすく成長し、全個体が無事巣立ちに成功しました。また標本・図書の全面公開に向けたデータベース化も着実に進行しております。

しかし、鳥類をとりまく世界の自然環境は依然として厳しい状況におかれています。森林の消失と劣化は驚くべき速さ—毎年1,300万ヘクタール(毎分サッカー場36面分)で続いているという事実があり、森林性の鳥類が生存しにくい状況が増大しています。また沿岸漁業の漁獲高をみると、場所によってはかつての10分の1以下に減少しており、海鳥にとっても漁民にとっても厳しい環境が続いており、さらなる研究・調査が望まれます。どうか皆様の、更なるご支援をお願い申し上げます。

林良博写真
山階鳥類研究所 所長 林 良博

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