2025年6月3日掲載
アホウドリの保全活動に欠かせない手法の1つに鳥類標識調査があります。伊豆諸島鳥島(以下、鳥島)での継続した鳥類標識調査は、1979年に東邦大学(当時)の長谷川博氏がその年に生まれたすべてのひなに足環をつけたことから始まり、現在は山階鳥研がこれらの活動や調査を引き継いでいます。そのため、1979年以降の鳥島生まれのアホウドリ(2023年末時点で1万1,550羽※)にはすべて足環がついており、生まれた年がわかっています。
長寿記録を更新したアホウドリ(撮影:今野怜)
2024年11月13日から12月2日まで鳥島に滞在し、アホウドリの卵数カウント調査を行いました。この期間中の11月16日に、繁殖地の1つである燕崎で抱卵していた個体の足環を確認したところ、アホウドリの長寿記録が更新されたことが判明しました。
足環番号を照合すると、2006年に捕獲したときに、古い足環から新しく交換されたものでした。交換前の番号を調べると、1982年3月24日にひなのときにつけた足環であることがわかりました。この個体は42歳7か月であり、これまでのアホウドリの長寿記録の37歳8か月※から4年11か月の記録更新となりました。
巣立ったアホウドリが繁殖に参加できるようになるまでには5年程度を要し、繁殖が始まっても年に1個しか卵を産みません。この個体が標識された1982年は、鳥島の中に繁殖地はまだ燕崎しかなく(現在は3か所)、生まれたひなもたったの21羽でした。2024年3月現在、鳥島全体で1,173羽のひなが誕生するまでになっています。今回の個体が無事に成長し、繁殖を行い、その後も長寿記録を更新できるほど生存できているということは、継続した保全活動がいかに大切かを教えてくれています。
日本の鳥類標識調査は2024年で100周年をむかえました。今回のアホウドリの長寿記録の更新も、このような長期のデータの蓄積や整備があって初めてわかることです。
野生の鳥は通常、死ぬまで繁殖するので、初繁殖の年齢や、1回の繁殖で育てる子の数とともに寿命を知ることは、その種や個体群の生活史や保全管理において重要な情報になります。今回のような長寿記録の更新は、その生物への理解をうながすだけでなく、野生動物の保全管理や人間活動が環境に与える影響の見直しにもつながります。
※本記録は2023年12月末時点。これらのデータの使用には山階鳥類研究所の許諾(許可番号:山階保全第6-78号)を得ています。
関連プレスリリースは → こちら より