研究・調査

資料整備1 研究立ち上げの趣旨

2013年5月2日更新

本研究所では、平成13年度から文部科学省科学研究費補助金(特定奨励費)を受けて、「希少鳥類の生存と回復に関する研究」を所を挙げて行ってきたが、平成16年度をもって一応このテーマは終了することにした。これまでを第1フェーズと呼ぶならば、本年度(平成17年度)からは、第2フェーズに入ることになる。そこで、第1フェーズを総括し、第2フェーズを、どのように展開するか、その概要について紹介したい。

本研究には、いわゆる外部評価委員会に当たる「総括及び研究調整会議」が設けられていた(第1フェーズの議長:琵琶湖博物館館長川那部浩哉氏)。この調整会議及び科学研究費補助金審査部会から、第1フェーズの研究に対していただいたご意見をまとめてみると、主に以下の4点に集約できる。

  • 1)研究所の全体計画のなかでの科研費研究の位置づけが判然としない。
  • 2)総花的であり、全てができるのか?もう少し焦点化すべき。
  • 3)個々の学術研究については、他の領域の科学研究費などに積極的に応募するべき。
  • 4)ホームページなどを使った成果の公開にもっと力を入れるべき、というものであった。

そこで所内で山階鳥類研究所の特質について、話し合った結果、大学や他の研究機関にないものは、

  • 1)アジア地域有数の約7万点に及ぶ鳥類標本
  • 2)40年以上にわたって収集した、約400万件に及ぶ標識データ
  • 3)約3万7千点に及ぶ鳥類に関する図書、雑誌、映像を含む文献資料

であるという結論を得た。これらの資料を整備して、内外で活用できるようにすることにこそ焦点を当てるべきであろう。従って、第2フェーズの研究テーマは「日本産鳥類資料の整備と活用に関する研究」とした。そして研究所の全体的研究計画の中での科研費に関わる研究の位置を明確にしながら、研究課題の構造を下記にまとめてみた。

山階鳥類研究所研究課題の構造(第2フェーズ)

若干説明を加えると、4班は、提起された問題点の3)に抵触するが、科研費・民間の研究費・委託研究費などに研究費を求めてはいるものの、なかなか実現しない現状から、将来的には「科研費以外の研究」に移行することを目指して、過渡的に本計画案では点線枠で囲ってある。

次に、第2フェーズを開始してみて、すでに躓(つまず)いている問題がある。それは、科学研究費補助金審査部会のご指摘の4)に関わることだが、データベース化された標本をホームページにアップするためのプログラムの開発を科研費を使って外部に委託しづらい点である。これについては民間の助成を受けるよう積極的に働きかけてはいるが、「プログラム開発」に使えるような助成金はなかなか得にくいのが実情だ。

0班「研究調整会議」の委員には、第2フェーズでは青木清(上智大学名誉教授)、石居進(早稲田大学名誉教授)、岩槻邦男(兵庫県立人と自然の博物館館長)、浦本昌紀(和光大学名誉教授)、遠藤秀紀(京都大学霊長類研究所教授)、大島康行(早稲田大学名誉教授)、小野勇一(北九州市立いのちのたび博物館館長)、川那部浩哉(滋賀県立琵琶湖博物館館長)、進士五十八(東京農業大学教授)、早川信夫(NHK解説委員)、林良博(東京大学教授)、日高敏隆(総合地球環境学研究所所長)、星元紀(慶応義塾大学教授)、宮田隆(JT生命誌研究館顧問)、和田英太郎(海洋研究開発機構地球フロンティア研究センタープログラムディレクター)の各氏にお願いした。忌憚のないご意見をいただきたい。

以上の計画は、すでに文科省に認められ、平成17年度は総額5千6百万円で執行される。所外からの多くの共同研究者の皆様には大変お世話をおかけすることになるが、紙面を借りてよろしくお願いしたい。これに引き続き、2月号と3月号で、各班で具体的に何を目指しているのかを、班長さんに紹介していただく予定だ。

(研究代表者:山階鳥類研究所 所長 山岸 哲)
~山階鳥研NEWS 2005年12月1日号より~


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