7.1.1 伝書鳩(レース鳩)の管理規制


 付随した施策の一つに伝書鳩飼育者に対する管理規制がある。伝書鳩飼育熱がたびたび繰り返されているが、飼育者の中には小中学生も多いと思われる。

 動物の飼育観察は子供の情操教育の面で好ましいことではあるが、伝書鳩の場合は他の動物と異なり、ただ飼うのみではなく放鳩訓練が欠かせないという特徴を持ち、未熟な飼育者による放鳩訓練が伝書鳩を野に定着させる結果となっている。また進学、就職、家の改築、転居等の理由で飼育を断念した者は処分に困り、野に伝書鳩を放すという形で処分を行っていることが多いと思われる。

 さらに4.4で述べたように、熟練した飼育者でさえ優秀なレース鳩を作り出すためにレースに参加し、脱落した多量のレース鳩を野に定着させる結果を招いている。このことが最近のドバトの増加と分布の拡大、被害の増大と無関係であるとはいえない。
 動物保護法(動物の保護及び管理に関する法律)に待つまでもなく、動物を愛護し飼育する者は、その動物の本能、習性、生理をよく理解し、家族同様の愛情を持って保護し、終生飼養するように努めるのは当然である。

 鳩に関して訓練やレースを行う多数羽飼育の愛好家もやはり、レースに勝つことを考える前にその愛情を一羽一羽にまで注いでこそ真の愛好家といえる。また、役割を終えた鳩(淘汰鳩を含む)の処分も真に鳩の為を思えば、野に放すようなことはせず、殺処分するか他の処分を考えることは飼育者の義務であろう。まして人間が趣味や飼養の目的で繁殖させた伝書鳩が野に定着し、他人の財産に対して侵害するようなことがあってはならない。

 現在では飼育者団体内部で自主規制によりこれらの弊害が除かれるよう努力が払われている。しかし、自主規制の努力にもかかわらずカバーできない部分も現れてきている。

 そこで飼育者には、伝書鳩の足環付けの徹底による所有者を明らかにする法的義務付けによりすべての迷い鳩の問い合わせ先を明確にする、足環のない伝書鳩の放鳥の禁止、レースの制限(距離、回数、羽数、レース参加資格鳩の検討)、淘汰鳩の処分としての放鳥の禁止、淘汰鳩の処分の明確化等が必要と思われ、このことは任意加盟の飼育者団体の自主規制の権限外に及ぶこともあるので、団体に未加盟の個人飼育者にも適用を受けるような何らかの法的規制が必要と考えられる。

 また、伝書鳩を放鳥せずに飼育する場合を除いて、放鳥する者すべてに伝書鳩の足環付けを徹底させるため、飼育者団体への加盟を義務付けする方法も考えられる。



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