5.2.3 不妊方法


 給餌を行っていて捕獲、殺生が難かしい神社・仏閣で個体数の増加抑制に使用した例がある。世論の支持は受けやすいが、現状では薬(不妊剤 Gametecide)が高価、毒性が強い、忌避性があり採食しない、移動して採食する鳥には効かない等の欠点や、野外実施例が少なく、従って効果の判定も難かしく、不妊効果が明確でないものが多いのが難点である。今後の開発に期待したい。

 TEM(Triethylenemelanine)、殺虫剤のDDT、Toxaphene、Dieldrinのドバトに対する効果は不明である。BDH10131はステロイド型不妊剤で、0.4〜0.8%塗布された餌を2日間ドバトに摂食させると不妊効果が現われ4週間産卵数が減少するという 4)
 オルニトロール(20,25-diazocholesterol dihydrochloride)1) は米国 SEARLE 社製、Avitrol 社のものでメーカーでは2、3年前に販売を中止している。トウモロコシに薬剤を0.1%塗布したもので、投与方法は1回10日間連続投与(400羽宛1日13.6kg)で6カ月間産卵と孵化を抑制するので、春と秋の年2回の投与で1年間繁殖が抑制されるという。ニューヨークでは約10%のヒナを減少できたということである。パリでは1972年より3年間、市の清浄行動本部が実際に使用している(6.1.6参照)。

 日本での室内試験の結果は、10日間給与後レースバトの番に約14週間にわたって産卵の停止を観察している 8) が、野外実施の有効例は報告されていない。筆者らの給与試験では、産卵を確認した2番に10日間給与後1〜2週間産卵された卵の孵化に成功しなかった。オルニトロールはドバトに忌避性があり、目的量を採食させることが難しく、強制給餌を行っても吐いてしまいドバトが餓死してしまうので実用的には難点がある。
 他にドイツ製で、給与後3週間ごろより効き120日目位まで有効で、後徐々に回復するような薬剤なども開発されて来ているようである。



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