3.3.5 繁殖周期


 旧馬舎での観察は8月下旬から10月末日までの約70日間しか行わなかったので、1年間の繁殖については明らかではないが、調査期間中6番による13回の繁殖が観察できた(図3.21)。なお、旧馬舎で就塒していた約40羽のドバトは、11月上旬の建物のとりこわしの後、隣接する建物屋根上で塒していたが、この建物もこわされると、約160m離れたキリン舎の建物に大部分が移動し、キリン舎内部には入らず、屋根上で就塒した。

 使用された巣のうち、No.11巣はNo.1巣を利用していた番が新しく作ったもので、次の繁殖の際には再びNo.1巣を利用した。前述のNo.9巣の番やNo.1巣の番のように、ヒナが巣立する前に次の産卵及び抱卵が行われることがあり、No.8巣の例も加えれば5例あった。山田も同様の報告をしているが、この時抱卵と給餌の雌雄の分担が起こり、雌はおもに抱卵を行い(雄15%、雌85%)、ヒナへの給餌は雄の半分以下になると云う 11))。

 1回の繁殖に要する日数は、第1卵産卵からヒナの巣立まで約50日要するが、ヒナへの給餌は巣立後も数日間続く。


図3.21 旧馬舎内の巣の利用状況(1076.8.22〜10.31)
図3.21
1) 3) ヒナ死亡、2) 卵破損


 旧馬舎では3番がほぼ連続して繁殖をしたが、残り2番は連続して繁殖をしなかった。また調査期間中に旧馬舎を塒として利用していた個体は30〜40羽(巣立雛を除く)だったが、このうち繁殖に参加していたのは6〜10羽で、全体の 1/3 以下である。このように、就塒・営巣場所全体のドバトからみると、繁殖に参加するドバトは多くなく、しかも繁殖を行う番のうち連続して繁殖を行う番数は一層少ないといえる。

 神奈川県平塚市の農村部2ヶ所の例でも繁殖していた番数は少なく、塒数約20羽に対し、繁殖番数1〜3番(年間巣立雛数約10羽)及び約2番(同約8羽)程度であった。
 Murton による Salford Docks の例では、群れの約20%が繁殖に参加し、繁殖番当り1年に6羽のヒナを育てるが、群れ全体から計算すると、1羽あたり約0.6羽しか巣立たないという 7)

 同じ番が1年間に何回繁殖するかは明らかではないが、山田によれば、繁殖期はおもに2月末から10月末までで、繁殖回数は平均3回、多い例では5回があったという 11)。多摩動物公園内のインド象舎塔屋内や渋谷駅ガード下の調査では冬期でも卵やヒナが観察されているので、東京などではほぼ1年中繁殖が可能と思われる。



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