3.1.3 東京都渋谷地域でのドバトの分布


a.ドバトの分布

 いわゆる都市環境の代表として、渋谷駅を中心とした4km×4kmの地域でもドバトの個体数調査を行った。

 同地域で観察されたドバトの総個体数は、1,532羽、密度は約96羽/km2で、特に渋谷駅周辺の3区画(1区画は250m×250m)で約400羽のドバトが観察された(図3.6)。また前二者に比べ、渋谷地域では採食していた個体が多く観察された(表3.8)。


図3.6 東京都渋谷地域のドバトの分布
図3.6


    表3.8 行動型別観察個体数(渋谷地域)

    行動型
    個体数
     休 息 760 49.6
     採 食 382 24.9
     歩 行 151 9.9
     採食歩行 92 6.0
     飛 行 147 9.6
    1,532 100.0


 渋谷地域は現存植生図による環境区分では大部分が市街地になり、環境要素の占有面積とドバトの出現状況との関係が明らかではない。そこで植生図のかわりに航空写真を用いて、高層建築街、市街地、住宅地、道路及び鉄道等、草地、林地などに分けた。しかしこれらの区分とドバトの出現状況との間にも、有意差が認められなかった。これは、環境区分に問題があるかもしれないが、それよりも、これらの環境のほかにドバトの分布に関係するものがあるか、あるいはこれらの環境が複雑に入り組んだモザイク的環境が地域全体に繰り返し配置されているためかと考えられる。いずれにしても、植生図による区分では市街地にドバトが多いことは明らかであり、長野でのセンサスでも、市内の裏通りより表通りでドバトが多く観察されている(中村登流 1977 私信)。

 しかし、食物との対応をみると神奈川区や立川・日野と同様に、食物の存在とドバトの分布との間に一定の関係が認められた(表3.9、3.10)。

表3.9 食物供給地のドバト出現状況(渋谷地域)
 
食物供給
あり
なし
ドバト出現区画数 28 77 105
ドバト非出現区画数 1 150 151
29 227 256


    表3.10 食物供給周辺地区のドバト出現状況(渋谷地域)

 
食物供給
周辺
非周辺
ドバト出現区画数
82
23
105
ドバト非出現区画数
88
63
151
170
86
256



b.渋谷地域の鳥類

 渋谷地域ではドバトの調査の際に他の鳥類の個体数調査を並行して行った。
 同地域ではドバトを含めて14種の鳥類が観察された。これを調査地域の一部でもある自然教育園での鳥類の報告 3) と比べると、水禽類を除いた種類についてはあまり違いがないが、それぞれの優占度をみるとドバトの優占度が非常に高くなっている(ドバトの優占度約51%)。



back       menu       next