3.1.2 東京都立川・日野地域でのドバトの分布


 市街地・住宅地を中心とした地域でのドバトの分布の様子を知るために、東京都西部の立川・日野両市を中心とした4km×8kmの地域で、神奈川区と同様にドバトの個体数調査を行った。同地域は、鉄道沿線を中心に住宅地が広がり、その間には農耕地が比較的多く残っている。

 同地域で観察されたドバトの総個体数は、1,465羽、密度は約46羽/km2で、神奈川区と比べて地域全体に広く分散しているが、立川駅周辺、富士見台団地、高幡不動、多摩動物公園などは特にドバトの個体数が多かった(図3.4)。観察されたドバトの個体の行動は、休息に次いで飛行が多かったが、採食していた個体は神奈川区同様1割以下と少なかった(表3.5)。

図3.4 東京都立川・日野地域のドバトの分布
図3.4


表3.5 行動型別観察個体数(立川・日野地域)

行動型
個体数
休 息 778 53.1
飛 行 489 33.4
採 食 100 6.8
歩 行 35 2.4
就 巣 2 0.1
その他 61 4.2
1,465 100.0

 次に250m×250mの区画を単位に、植生図による環境とドバトの出現状況との関係を検討した。

 森林植生の少ない区画(面積占有率0及び1〜20%)ではドバトの出現率は40%弱だが森林植生の占有面積が多くなるとドバトの出現率は低下した。なお森林植生の面積占有率81〜100%の区画でのドバトの出現率が若干高いのは多摩動物公園の存在による(図3.5)。
 市街地の場合は森林植生の場合とは反対に、市街地の占有面積の増加に伴いドバトの出現率は高くなった(図3.5)。

 草地や工場地の場合には、これらの占有面積とドバトの出現状況との間には、χ2分布検定による有意差がみられなかった。これは、本地域では工場地のある区画が少ないこと、及び草地の場合には上空を飛行していた個体が多かったことと関係があると考えられる。


図3.5 森林植生・市街地の占有面積別ドバト出現率(立川・日野地域)
図3.5
1) 緑の少ない住宅地および市街地

 次に、神奈川区と同様に食物の存在とドバトの出現状況について検討した。

 それによると、食物供給のある区画の大半でドバトが観察された(表3.6)。さらに食物供給の影響を周辺まで広げて考えた場合でも、食物供給周辺地区の方がドバトの出現した区画が多かったが、神奈川区の場合ほど著しい差はみられない(表3.7)。これは食物供給の規模が、一部を除けば比較的小さいこと及びその区画内での採食に直接の関係が大きくない上空を飛行中の個体が多いことによると考えられる。しかし、立川の貨物駅周辺・精米工場及び多摩動物公園などの食物が豊富に存在する区画では大きな個体数の集中がみられた。


表3.6 食物供給地のドバト出現状況(立川・日野地域)

1区画あたり個体数
食物供給
あり なし
0 7 337 344
1-11 5 134 139
12< 13 16 29
25 487 512


表3.7 食物供給周辺地区のドバト出現状況(立川・日野地域)

1区画あたり個体数
食物供給
周辺
非周辺
0 78 266 344
1-11 48 91 139
12< 20 9 29
146 366 512



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