鳥類標識調査

仕事の実際と近年の成果

2026年3月18日掲載

利根川ゆうゆう公園での鳥類標識調査の立ち上げ

研究員 油田照秋

山階鳥研では、全国の市民標識調査員(バンダー)と協力し、鳥類標識調査を実施しています。主にかすみ網を用いて野鳥を捕獲、標識し、また足環のついた個体を再捕獲し放鳥するなど、足環番号を再確認することによって渡り鳥の移動などを調べています。このほか鳥類標識調査には、同じ場所で定量的な調査を複数回行うことで地域の鳥類相を、さらに長期的に実施することで鳥類相の変遷や地域環境の変化などを把握するといった意義もあります。

図1 調査地にかすみ網を張った調査地の様子(6〜7月)

山階鳥研では、北海道や新潟などで職員が長期的・定期的な調査を実施していますが、千葉県の研究所周辺ではそのような調査を実施しておらず、近隣の鳥類相やその変化については調べていませんでした。また、山階鳥研の近くに職員が管理し、定期的に調査をする場所(網場)があれば、職員や周辺バンダーとの交流の場となり、調査に興味のある地元の方やバンダーを目指す人にも紹介できるのではないか、ほかにも他機関の研究者と共同研究を進めたり、調査や山階鳥研の取り組みに対する取材対応の場としても役立つのではないかと考えました。

そこで私たちは数年前から周辺地域で山階鳥研が管理し、長期的・定期的に調査ができる適当な場所を探していました。そして、2024年の3月より、山階鳥研から直線距離で約6.5km、車で15分程の利根川河川敷にある「利根川ゆうゆう公園」という場所で調査をすることにしました。

これまでの調査結果など

基本的に月に1度、2日間にわたり公園内の河川敷林やヨシ原に約30枚のかすみ網を張り、1日目の午後から日暮れまでと2日目の夜明けから昼前まで調査をします(図1)。もちろん野外での作業なので、天候、とくに雨風に左右され、夏の暑さにも冬の寒さにも苦労しながらですが、最近は山階鳥研の職員と我孫子市鳥の博物館や千葉県立中央博物館の学芸員のほか、地元のバンダーや野鳥の会で興味をもってくださった方などを中心に、毎回10人程度が集まって調査を実施しています(図2、図3)。

図2 オオヨシキリに足環をつけている様子(2025年7月)

図3 標識後、性別や年齢を確認し、計測したあとに放鳥する

2024年11月から2025年10月までの1年間の調査結果の概要を紹介します。1年間で標識放鳥された種は合計36種でした。一番多く放鳥されたのは、アオジ(図4)で115羽(うち再放鳥44羽)、そしてウグイス90羽(同51羽)、オオヨシキリ82羽(同36羽)、シジュウカラ68羽(同28羽)、カワラヒワ55羽(同1羽)、と続きました(表1)。アオジは冬鳥で、秋から冬にみられます。オオヨシキリは逆に夏鳥で、5月ごろ飛来し8、9月ごろまで滞在します。ウグイスは、留鳥で毎月放鳥されました。カワラヒワやスズメは調査地のヨシ原でねぐらをとることがあり、放鳥数は多いですが、再放鳥は少ないという結果でした。数は多くありませんが、森林性のコゲラやホトトギス(図5)、水辺でみられるカワセミやタシギなども放鳥されました。基本的には、秋から春にかけて冬鳥が増え、種数、捕獲数ともに多くなりますが、夏は減る傾向がありました。

表1 放鳥数の多かった種(2024年11月〜2025年10月)

  新放鳥 再放鳥 合計
1アオジ7144115
2ウグイス395190
3オオヨシキリ463682
4シジュウカラ402868
5カワラヒワ54155
6スズメ46147
7ホオジロ331245
8エナガ201333
9ベニマシコ121426
10カシラダカ21324
11ガビチョウ61218
12オオジュリン12012
13メジロ729
14 モズ 6 2 8

図4 アオジ(2024年3月、撮影:小田谷嘉弥)

図5 ホトトギス(2024年6月、撮影:小田谷嘉弥)

ゆうゆう公園調査の今後

「年間を通して長期的な調査をしよう」と始めた調査ですが、継続するためには課題もあります。まず、野外調査なので常に天候や環境の変化に注意が必要です。とくに夏の暑さは近年厳しくなる一方で、暑い時期は人にも鳥にも危険です。また、調査地は河川敷なので、台風や集中豪雨などがあると、現地では降っていなくても数時間で数十cmも水位が変わることがあり危険です。さらに、調査地では、これまでイノシシやスズメバチ、マムシなど、注意しなければならない野生動物が確認されています。ほかにも、鳥類相や環境の変化をとらえるには、網の枚数などの調査努力量を安定させなければいけないなどの課題はありますが、今後もできるかぎり定量的、定期的、長期的に調査をし、多くの人に参加してもらって議論しながら鳥類相や環境の変化を調べていきたいと思っています。

(写真・文 ゆた・てるあき)

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