鳥類標識調査

仕事の実際と近年の成果

2015年11月18日掲載

日本とイランの間で野鳥の移動 初確認
イランからマミジロアジサシが飛来

2014年10月13日沖縄県名護市安部(あぶ)のカヌチャゴルフコースで、マミジロアジサシが保護されました。保護されたのは、太平洋上で「大型で非常に強い」勢力となった台風19号が沖縄島を通過した翌日でした。救護した方によってヤンバル動物診療所(名護市内)に持ち込まれたときにはすでに死亡していましたが、装着されていた足環にイランのものと思われる刻印があり、NPO法人どうぶつたちの病院沖縄を経由して山階鳥類研究所に連絡が入りました。

山階鳥類研究所でイランの環境省に問い合わせたところ、この個体は、イラン国環境庁ブーシェフル州事務所のファルハード・ホセイニ・ターイェフェさんらの研究チームが、イランのペルシャ湾沿岸のナヒールー島で2013年7月28日にヒナを捕獲し足環を装着して放鳥したものであることが判明しました。

マミジロアジサシの移動

沖縄県名護市で保護後死亡したマミジロアジサシ(上)と今回判明した移動(下)。足環には「ENVIRONMENT TEHERAN CW08016」という刻印があった(写真提供:金城道男(NPO法人どうぶつたちの病院 沖縄))

マミジロアジサシは、広く熱帯の沿岸に分布する海鳥で、日本でも琉球列島で繁殖しています。本種に限らず、西アジアと東アジアの鳥が行き来する事例はほとんど知られていません。

南西諸島でアジサシ類の標識調査を長年行ってきた尾崎清明副所長は「私たちは、これまでに琉球諸島で約1,500羽のマミジロアジサシに足環を装着していますが、移動回収例はありませんでした。この事例はマミジロアジサシのみではなく、すべての種を含めて日本とイランの間で足環によって鳥の移動が確認された最初の例で、とても驚いています。足環による標識調査の有効性が示された事例だと思います」と述べています。

「山階鳥研NEWS 2015年9月号」より

山階鳥研では、この事例につき2015年9月25日付けで報道発表を行いました。
>> プレスリリースのページで報道資料(PDF)を見る

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