鳥類標識調査

仕事の実際と近年の成果

2015年11月18日掲載

ホウロクシギの長寿記録を更新 20年3ヶ月

2015年3月19日、広島県福山市の松永湾で、渡辺健三さんによって足環つきのホウロクシギが観察・撮影されました。画像を拡大したところ、オーストラリアの文字と足環番号が解読できたため、山階鳥類研究所に連絡をいただきました。山階鳥類研究所でオーストラリアの標識センターに問い合わせたところ、この個体は、1994年12月10日にオーストラリア・ビクトリア州ウエスタンポート湾ガーディーズで、捕獲されて足環を装着され、放鳥されたことがわかりました。

ホウロクシギと足環

最低でも21歳であることが判明したホウロクシギ。AUSTRALIAの文字と091-26470の数字とが読み取れる。600ミリの望遠レンズを装着した一眼レフカメラで撮影。(2015年3月19日広島県福山市松永湾。渡辺健三氏撮影)

足環の装着から今回の撮影までの経過時間は20年3ヶ月となり、日本の鳥類標識調査での本種のこれまでの最長期間経過後の回収記録である11年1ヶ月を大幅に更新しました。またオーストラリアでの標識調査の本種の最長期間経過後の回収例の19年を更新しており、おそらく本種の最長寿記録と思われます。

この個体は1994年の捕獲の時点で、羽色から1歳以上だったことがわかっており、最低でも21歳であったことがわかります。

金属製の足環の番号は、本来、再捕獲や死体での回収によって鳥体が再度手に取られた際に読み取られることを想定していますが、近年はデジタルカメラの普及によって今回のように捕獲せずに確認される事が増加しています。

尾崎清明副所長は「生物が野生状態でどれだけ生きるかは、その種の生態の理解のための重要な情報ですが、鳥類の野生状態での寿命は標識調査を通じてしか知ることができません。今回得られたようなデータの地道な積み重ねによって種の保全にも役立つ基礎資料となってゆきます。」と述べています。

「山階鳥研NEWS 2015年9月号」より

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