2026年5月25日掲載
京都府立西舞鶴高等学校 本藤聡仁
京都府舞鶴市沖にある無人島「冠島」は、外洋性海鳥オオミズナギドリの西日本最大の繁殖地で、天然記念物に指定されています。長年にわたり冠島調査研究会(会長:須川恒氏、副会長:狩野清貴氏)が標識調査等を継続し、基礎的知見の蓄積に大きく貢献してきました。私たち京都府立西舞鶴高等学校は、その活動に20年以上同行して島で野営して調査を行うなど【図1】、地域に根ざした探究を続けています。

図1 冠島(無人島)で野営し、調査準備を行う様子(漂流物をテーブルやイスとして利用している)
今回のバイオロギング・プロジェクトの出発点は、英語の教科書(数研出版)でバイオロギングを学んだ高校生のひと言、「先生、オオミズナギドリにデータロガーをつけたいです」でした。専門的な技術や倫理配慮を要する挑戦でしたが、山階鳥研の講習会と継続的な助言、東京大学の佐藤克文先生・麻布大学の渡辺伸一先生・福知山公立大学の吉田誠先生をはじめ、多くの方々のご協力を得て、装着技術や機材選定、鳥への負担を最小化するといった原則を学びました。これらの人的・技術的支援がなければ、本プロジェクトは実現しませんでした。これまで、冠島のオオミズナギドリに対するGPSデータロガー等を使った調査はなされておらず、日本海西部の本種の行動圏や利用海域は不明な点が多いなど、本プロジェクトは学術的な意義も大きいことがわかり、私たちのモチベーションも高まっていきました。
2025年夏、通信機能付きGPSロガーをオオミズナギドリ数個体に装着し【図2】、そのうち4個体から計21回のトリップを安定取得することに成功しました。帰島前に島を周回する「鳥まわり」とよばれる特異的行動も、1分間隔の高頻度記録で可視化できました。西日本のオオミズナギドリ個体群の日本海における利用海域が山陰沿岸からさらに北方へ広がる可能性が示唆され、保全上重要な海域もみえてきました。詳細は学術論文として取りまとめ中のため、本稿では踏み込んだ解析の詳細は紹介していません。続報(論文)にご期待ください。

図2 冠島でオオミズナギドリにデータロガーを装着する様子
教育面では、現在の学習指導要領が重視する探究学習の理念に合致した取り組みとして、生徒が「問いの設定→文献・講習での学び→野外での調査→データ分析→地域への発信」までを一貫して経験しました。無人島での野営、夜間の調査、機器のトラブルシューティング、プログラミングを用いたデータの可視化、さらには普及啓発まで、教室だけでは得られない学びが凝縮されています。
本プロジェクトで得られた多くの学びを地域に伝えるため、「西高サイエンスデイ」、「発見!理探LABO」などのイベントを主催し、地元の小中学生に対する普及啓発にも力を入れています【図3】。ゲーム感覚で鳥類学を学ぶ活動の開発や、島からのライブ配信等で、地域の子どもたちへ「海と鳥でつながる学び」を届けてきました。調査・教育・地域連携を往還するこの循環は、「地域の鳥を、地域の力で守る」という私たちの合言葉そのものです。
最後に、本プロジェクトは山階鳥研の講習会・ご助言、冠島調査研究会の長年の蓄積、海上自衛隊による輸送支援、舞鶴市役所や地域の皆様の支援なしには成り立ちませんでした。今後も調査を継続し、地域に愛着をもつ科学人材を育てながら、鳥の学問が次世代へ継承されるよう、探究学習の実践モデルとして磨きをかけていきたいと考えています。

図3 高校生が講師となり、小学生に冠島や海鳥の暮らしを紹介する
(文・写真 ほんどう・あきひろ)