読み物コーナー

2021年12月2日掲載

小笠原諸島だけに生息するオガサワラカワラヒワは、昨年、山階鳥研の所員も加わった共同研究の成果として独立種として扱うことが提案されました。絶滅の危機に瀕しているこの鳥の保全に、地元の小笠原諸島で尽力されている川口大朗さんに、この鳥の現状と、保全活動の実際についてご紹介いただきました。

山階鳥研ニュース」2021年11月号より

絶滅寸前!日本の固有種オガサワラカワラヒワ

一般社団法人 Islands care 川口大朗

スズメ目アトリ科の種カワラヒワの亜種オガサワラカワラヒワ(Chloris sinica kittlitzi)は、全長約14㎝、体重約18gの小型の鳥です(写真1)。外見は本州に生息する亜種カワラヒワに似ていますが、他亜種に比べて体が小さいです。一方で嘴は、どの亜種よりも大きく、体は小さく嘴が大きいというユニークな特徴を持っています。DNAの分析から固有種とするのがふさわしいことが2020年に論文発表されています。日本では、2022年に11種めの日本産固有鳥類として記載されることが期待されています。

オガサワラカワラヒワ(以下オガヒワ)は、島の呼び名でクザイモンと呼ばれていたそうです。現在、小笠原でこの呼び名を知っている人は、ほとんどいません。人々の記憶からも消えつつあるこの鳥は、今、日本の中で最も絶滅の危機に瀕しています。

写真:オガサワラカワラヒワ

写真1(左)オガサワラカワラヒワ幼鳥。(右)成鳥雄。

図:系統樹

図 オガサワラカワラヒワの系統樹。(Saitoh et al.(2020) を参考に作図)

現状と減少要因

オガヒワは、以前は小笠原の島々に広く分布していましたが、現在は母島列島属島部と南硫黄島のみで繁殖しています。母島列島の繁殖個体数は、25年間で10分の1程度に減少し、現在は約100羽と推定されています。南硫黄島も約100羽と考えられているので、なんと世界でわずか200羽しかいないのです。 減少要因としては、外来のネズミ類やノネコによる捕食が大きいと考えられています。小笠原諸島は、大陸と一度も繋がったことがない海洋島です。海洋島の生き物たちは外から入ってきた生き物(外来種)に対しては大変脆弱で、約190年前の人間の入植以来、多くの固有種が姿を消したり、数を減らしてきました。固有の鳥類も、4種のうち3種がすでに絶滅しています。

緊急的な調査の開始

現在私たちは、民間の助成金や保全活動の支援制度(自然保護助成基金、東京都動物園協会、公益推進協会、モンベル)、日本全国からのクラウドファンディングの支援等により、繁殖状況と個体数モニタリングの調査を行っています。

母島列島におけるオガヒワの主な生息・繁殖地は、母島周辺の無人島になります。無人島へは、近くまで船で行き、そこからはシーカヤックまたは泳いで上陸となります。上陸の難度がとても高いため、目視調査だけでなくセンサーカメラを使用した調査を行うことで、年間を通して個体数の変化を監視しています。

写真:無人島上陸

写真2 無人島への上陸の様子。

ワークショップの取り組みと今後の課題

危機的な状況を受けて、2020年12月に絶滅危惧種の保全に取り組む専門家、自然環境保全に関わるNGO・NPO、地域住民、関係行政機関が立場を越えて集まり、オガサワラカワラヒワ保全計画づくりワークショップ(以下WS)を開催いたしました。コロナ禍のため、オンラインによる複数回開催となりましたが、WSおよび関連イベントの総参加者数は160名以上、総議論時間は30時間を超えました。

その結果、まずは3年間の短期集中で、オガヒワの減少を止めることが全体の大きな目標となりました。参加者の投票では、母島属島での外来ネズミ対策、属島での繁殖後に一部の個体が渡ってくる母島本島(集落以南)でのノネコ対策、生物学的な情報の収集、小笠原での飼育と繁殖が、重要な保全対策として上位に選ばれました。

WSで策定された保全計画をすぐに実行に移さなければ、オガヒワの絶滅は回避できません。国や地方自治体だけではなく、全ての関係者が協力・連携して、早急に保全対策を実施する必要があります。世界中で日本、そして小笠原にしかいない鳥を皆で守っていきましょう。

(写真・文 かわぐち・だいろう)

* 関連ページはこちらから → 「オガサワラカワラヒワ」目次

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