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Q&A

2024年3月28日更新

 

庭木に鳥が巣を作りました

玄関先の植え込みに30cmくらいの灰色の鳥が巣を作り、雛が孵って最近は大きくなりました。雛の羽も生え揃ってもうすぐ巣立ちそうです。鳥の種類と、気をつけることがあれば、教えてください。

お送りいただいた動画から、玄関先で営巣した鳥は、全体に灰色で嘴が尖り、耳羽(目の後ろ)が茶色です。また巣は、木の枝に細い枝などを腕型に組んだもので、中に羽毛がまだ生えて折らず、目も開かないヒナが写っています。これらの特徴から、この鳥はヒヨドリだと思われます。日本全国でごく普通に見られますが、世界的には日本や台湾、朝鮮半島などの極東地域にしかいない鳥で、海外のバードウォッチャーにとって憧れの鳥の一つです。

ヒヨドリ

ヒヨドリは、卵を抱いている期間は約2週間で、ヒナが孵化してから巣立つまで10日前後です。今回のヒヨドリはいろいろな候補地を検討した上で、玄関先の木が安全だと判断して巣作りをしているはずです。雨がかかったらどうしようとか人間にはいろいろ心配に見えるかもしれませんが、ヒヨドリはそういったことも全部織り込み済みです。例えば気を利かせたつもりで傘をさしかけたりすることで、人間には分からない、ヒヨドリにとってのこの場所の重要なメリットが失われてしまうかもしれません。というわけで、特に何をする必要もなく、気をつけることをあえて言葉にするならば「見て見ぬふり」がヒヨドリにとって一番ありがたいことです。しかし、捕食動物の一つであるネコが巣に近寄ってくるようなことがあったら注意して下さい。ヘビ(特にアオダイショウ)も鳥を食べますが、ヘビも生態系の一員であり、自然の中では大事な役割をしているので、追い払う程度にしていただき、命まで奪うのは勘弁してあげてください。

 ヒヨドリが都会で繁殖し始めたのは、東京近郊では1970年代で、それまでは夏の間は山地で繁殖し、秋になると平野部に現れ、冬を越す鳥でした。その変化の理由はよくわかっていませんが、戦前は薪炭林として管理されていた雑木林が放置されて、樹齢や繁り具合などが変わったことや、都会にある公園や住宅地の木々が年月が経ってしっかりしてきたこと、庭先に果樹が増えてヒヨドリの食料が増えたことで、ヒヨドリ自身も都会に順応してきたのではないかといったことを言う人もいます。ヒヨドリ同様に近年になって都会に進出してきた鳥には、チョウゲンボウやコゲラ、イソヒヨドリ、オオタカなどもいます。

(文章協力:神戸宇孝)

ウグイスの写真を撮ろうとするとすぐ逃げられます

ウグイスの写真を撮りたいのですが、カメラを向けるとすぐ逃げられてしまうのはなぜですか?

ウグイスに限らず野鳥一般にとって人間は、潜在的な捕食動物と認識されています。そして野鳥は、当然ですが捕食動物に対して常に警戒しています。このように私たちは鳥にとって危険な相手と考えられているということが、観察者、撮影者として心に留めておくべき第一のことで、ただ観察したいとか撮影したいというこちらの一方的な気持ちだけで、無造作に接近してもなかなかうまく行かないものだということをはじめに理解する必要があります。鳥はよく人間の動きを見ていて、観察していると、自分に興味のない通りすがりの人が近づいても逃げないのに、撮影のためにカメラを構えただけで逃げている様子が見られます。

ウグイス

野鳥を警戒させないためにはどうしたら良いかですが、しばしば言われるのは、「木化け」と言って、こちらから接近することはせず、状況によっては立木に寄り添うなどして、あたかも環境の一部であるかのようにじっとしているという方法があります。そうすると、鳥が警戒を解いて状況によっては近づいてきます。木化けまでは行かなくても、体を低くして急な動きを避け、そっと動くことが重要です。その際、鳥から目を離さず、行動に変化がないか十分注意して、鳥が警戒するそぶりを見せたら、一度立ち止まるとか、後ろに下がるなども含めて、ともかく鳥に警戒させないことを最優先にして行動することが大切です。鳥の生活を妨害しないことで、観察や撮影も満足できる結果が得られることを覚えておいてください。


また上記のように鳥は鳥でいろいろなことを感じながら行動していますから、鳥の行動を事前に理解しておくことも大切です。まず双眼鏡などで観察を重ね、行動を理解することでシャッターチャンスが増えると思います。

鳥の行動についていうと、いつもなら逃げる距離なのに鳥がちっとも逃げない状況に出くわすこともあるかもしれません。「今日はサービスが良い」などと考えがちですが、こういう場合は、鳥は自分がいちばん行きたいまさにその場所(あるいはそのすぐそば)にあなたがいて、近づけなくて困っている可能性が高く、その場合、あなたが急いでその場を立ち去ることが鳥のために必要です。例えば、繁殖期に、鳥が餌をくわえたままあなたの周囲を飛び回ったり、すぐ近くの枝でじっとして、盛んに鳴いているといった時には、まさにあなたの立っているすぐ近くにヒナのいる巣があって、親鳥が近づけなくて子育てに支障がある状況が起こっていると考えられます。こういった状況で長時間撮影をすると、親鳥がヒナを抱いて温められないとか、ヒナの世話ができなくなって、ほかの捕食動物に襲われやすくなるなどのことが起こる可能性もあります。


ウグイスに戻ると、ウグイスは藪の中を好み、しかも動き回ることが多いので、撮影が難しいと言われる鳥のひとつです。繁殖期の初め頃のさえずり初めのウグイスの雄は、藪から少し飛び出た枝などでさえずることも多く、そのような機会に上記のような木化けなどの方法で驚かさないようにすることで良い結果が得られるかもしれません。


野鳥には野鳥の生活があります。次のシーズンも次の次のシーズンも同じ場所で今見ている鳥が観察できるよう、観察や撮影で鳥に悪影響を与えることがないよう心がけていただければ幸いです。

(文章協力:神戸宇孝)

ハクチョウは夜でも目が見えますか

ハクチョウの観察を続けている者です。秋になって、初飛来を楽しみにしていると、前日夕方までいなかったハクチョウが翌朝に来ていたり、夜にも上空から声が聞こえたりします。そこで疑問に思ったのですが、ハクチョウは夜にも目が見えるのでしょうか?また、鳴きあっている様子を見るとその移動は家族ごとなのでしょうか?

ハクチョウ類に限らず、多くの野鳥は夜でも目が見えて、 飛ぶことができます。ただし日中に比べて見え方は悪くなっていると思われます。ハクチョウ類は渡りの期間以外には、差し迫った事情がなければ、夜活動しないとされていますが、渡りは昼も夜も行います。

コハクチョウの飛翔

ハクチョウ類ばかりでなく、ガン類やカモ類も昼も夜も渡ります。また、小鳥類では、ヒヨドリのように日中に渡る種もいますが、ツグミ類、ヒタキ類、ホオジロ類など、おもに夜に渡る仲間も多くいます。

渡り鳥が夜に渡るメリットとしては、日照によって上昇気流などが生じる昼間より夜のほうが大気が安定していること、夜のほうが涼しいため長時間の飛行でのオーバーヒートが防げること、昼行性の猛禽類の襲撃を避けられることなどが指摘されています。夜間にどうやって渡る方向を知るかについては、すべてのことが明らかになっているわけではありませんが、体内時計と星や月の位置から方向を判断している種があることが知られています。

ハクチョウ類は基本的に家族で行動する鳥です。日本に渡来するハクチョウ類はユーラシア大陸東部の高緯度地方で繁殖しますが、繁殖した家族は雛が飛べるようになると群れを作って、まず集団で換羽する換羽地に移動して換羽した後、越冬地に渡ります。その間、次の春までは、大きな群れになる場合でも基本的に家族で過ごしています。越冬地では、朝にねぐらから飛び立って採餌場所へ行き、夕方にまたねぐらに戻って寝るという行動を繰り返しますが、このような行動をする群れの中でも家族が近くで過ごしています。成鳥(大人の鳥)は全身の羽毛が白く、幼鳥(子供の鳥)は一部に灰色の羽毛が混じっていますが、幼鳥の灰色の羽毛は徐々に換羽して、春先になると白い羽毛が増えていきます。

(文章協力:神戸宇孝)

 

ハクチョウ類の餌付けについて教えてください

近所の水辺にやってきたオオハクチョウに餌付けをしているグループがありますが、あまり良いことではないと言っている人もいます。どう考えればよいでしょうか?

日本でのハクチョウ類の餌付けには長い歴史があります。日本で初めてハクチョウ類の餌付けに成功したのは1954(昭和29)年新潟県瓢湖と言われ、現在も行われています。瓢湖での餌付けの成功から全国で餌付けされる場所が増え、瓢湖と同様に冬季の観光資源にもなっている場所があります。

しかし、餌付けにはいくつかの問題点も指摘されており、絶滅寸前の生き物などでは複数の保全策の中のひとつとして野外での給餌が行われる例もありますが、ある程度の個体数がいる種では保全目的の餌付けは推奨されなくなりつつあります。ハクチョウ類でも、近年は餌付けが控えられる傾向にあります。ハクチョウ類の餌付けで考えられる問題点として、鳥インフルエンザなどの野生動物の感染症のリスクが高まる可能性が指摘されているほか、給餌の食べ残しや、自然状態よりも多数の個体が糞をすることによって水質が汚濁する可能性があることも問題です。

給餌を中止するとハクチョウ類の渡来数は減少することが予想されますが、野鳥は自然の中で生きている生物ですので、自然に存在する食べ物で生きていくのが本来の姿でしょう。人間が餌を与え、直接的に養ってしまうという状況は、いわば野鳥をペットにしているようなものです。

野鳥を守るためのいちばんの本筋は、鳥が安心して生活できる環境の保全や創造です。餌を与えてしまうのではなくて、自然を豊かにすることが必要なのです。自然に生えている水草がハクチョウ類の食物として誘引をしていると考えられるなら、水草が繁茂する水質管理や環境の整備をするのが良いでしょう。そこにはハクチョウ類以外の生物も多く生息する生態系が維持されます。また、ハクチョウ類の飛来するのは冬だけですが、良い環境が存在することでその場所に一年を通して生物の多様性が確保されるようになります。さまざまな生物の観察などを楽しめるようになれば、地域の方たちにとっても有益でしょう。ハクチョウ類だけがいる水辺ではなく、ハクチョウ類も滞在する、豊かな環境が日本各地に増えていくことを期待したいです。

ハクチョウ類への餌付け(写真:神戸宇孝)

(文章協力:神戸宇孝)

コウノトリですか、ニホンコウノトリですか?

日本で見られるコウノトリの名前は、「コウノトリ」と「ニホンコウノトリ」のどちらが正しいのでしょうか?

同種の鳥の中で、地理的に少しずつ異なった特徴の鳥がいるとき、それぞれを同種の中の「亜種」と言います。同じ鳥を呼ぶのに「ニホンコウノトリ」という和名と、「コウノトリ」という和名を聞くのは、亜種のうち日本に広く生息するものに、種の和名と同じものをつけるか、そうはせずにすべての亜種の和名を種の和名と区別できるようにするかという名前の付け方の方針の違いに一つの原因があります。

現在はユーラシアの東端から日本にかけて分布する体が白く、風切が黒く、嘴が黒いコウノトリ類(1)は独立種とされますが、過去には、中央アジアに分布する、体が白く、風切が黒く、嘴が赤く、体が比較的大きいコウノトリ類(2)とヨーロッパから北アフリカに分布する、体が白く、風切が黒く、嘴が赤く、体が比較的小さいコウノトリ類(3)と、とあわせて、一種とされていました。以前の分類では、コウノトリという種はユーラシア全体に広く分布していて、(1)(2)(3)の亜種がいると考えられていたのです。

(1)コウノトリ

(2)はオオシュバシコウ、(3)はシュバシコウと呼ばれますが、日本に広く生息する(1)の亜種に、種の和名と同じものをつけるという方針で行くと、亜種コウノトリと呼ぶことになります。これに対し、日本に広く生息するものに、種の和名と区別できるような亜種和名がついていたほうが望ましい考える場合には「ニホンコウノトリ」という名前が使われるのです。

(2)オオシュバシコウ(ウズベキスタンで撮影)(写真:園部浩一郎)

(3)シュバシコウ (ハンガリーで撮影)(写真:神戸宇孝)

冒頭で述べたように、最近の分類学では、嘴が黒い(1)は、嘴の赤い(2)(3)とは独立の種と考えられ、その際には(1)には亜種はないという扱いになるため、後者の考えでも(1)の種名を「コウノトリ」と呼ぶのでよさそうですが、他の種の鳥も含め後者の考え方を取ってきた方たちは引き続き「ニホンコウノトリ」と呼ぶ場合が多いようです。特にこのやり方は、動物園など一般向けに分かりやすく説明することが重視される状況でしばしば採用されています。

前者のやり方については一般向けにわかりづらいという意見もありますが、現在、日本鳥学会はこの考え方をとっており、同学会の「日本鳥類目録」では、(1)(2)(3)を同一種と考えていた時代から日本産の嘴の黒いコウノトリ類を「コウノトリ」という和名で呼んでいます。

(文章協力: 神戸宇孝)

鳥の死骸を見ることがないのはなぜですか?

鳥の死骸を見かけることがまずないのですが、なぜでしょうか?

自然の生態系の中には、食物連鎖があります。いわゆる「食う・食われる」の関係です。鳥を含む野生動物は天寿を全うして老衰で死ぬものは非常に稀で、多くの個体が、この食物連鎖の中で、肉食動物の食物として狩られて食べられて命を落とします。疲労や餌不足、病気や怪我などが原因で動きが悪くなった個体はこのようにして命を落とすでしょう。渡り鳥の中継地である日本海側の離島では、海を越えて渡ってきた鳥の中で体力のないものが人の存在に気付きながらも動けずにいる状態を見ることもありますが、このような状態では、天敵に襲われてしまうことも多いと予想されます。そのように、生き物は捕食されて命を落とすことが多いので、死骸として目にする機会が少ないのだと考えられます。

さらに、仮に鳥の死骸が落ちていたとしても、その死骸はやはり肉食性や雑食性の生物(例えばタヌキ、ネズミ、カラス)などに食べられます。その場で食べられることもありますが、その動物が安心できる場所へ運んでから食べることがあるため、人目につきづらくなることがあるでしょう。また、弱った鳥は茂みの中などに潜んでしまい、目につかずに命を落とし、そこで食べられることもあるだろうと推察されます。残った肉や骨などアリや昆虫その他の土壌動物などが食べ、更に細菌などが分解していきます。

鳥の死骸を見かけることが少ないというご質問ですが、実は、捕食されたあとの羽毛を見かけることは野外を歩いているとしばしばあります。鳥では、狩られた後に消化しにくい羽毛はむしられることが多いので、猛禽類に襲われたカモ類やハトなどの羽毛が地面一面に散らばっている場面に遭遇することがあるのです。

近年はシカやイノシシが山間部で増えたこともあり、それらの骨や角を登山の途中に拾うこともありますが、鳥の骨を見るのは比較的稀です。それは多くの鳥がシカやイノシシなどより遥かに小さいことから、骨が小さいことに加え、飛行のために体を軽量化する必要から、骨の内部が空洞になっていて壊れやすく、分解されやすいことも理由の一つと考えられます。ただし、遺跡などで、同じ場所で大量に鳥の骨が捨てられたり、腐敗が進む前に泥の中に埋もれたりした場合などは化石として残ることがあります。

水辺に打ち上げられたアカエリカイツブリの死体

捕食されたと考えられるコクガンの羽毛

(文章協力:神戸宇孝)

アヒルとガチョウの違いを教えてください

アヒルとガチョウの違いを教えてください。それから、ガチョウを観察したら、嘴にギザギザがあったのですが、これは歯ですか?

野鳥を飼い馴らして家禽化された鳥として、ニワトリと並んでアヒルとガチョウはよく例に挙げられますが、アヒルは野鳥のマガモから、ガチョウは野鳥のガンの仲間から品種改良されたものです。また、アヒルの祖先はマガモのみですが、ガチョウにはシナガチョウとヨーロッパガチョウ(セイヨウガチョウ)のふたつがあります。シナガチョウはサカツラガン、ヨーロッパガチョウはハイイロガンをもとに家禽化されたものです。

アヒルとガチョウを見分けるポイントの第一として体の大きさがあります。アヒルの方が比較の上で小さく、ガチョウは大きいのです。もう一つのポイントはくちばしの形で、アヒルの嘴は基部でも比較的厚さのない、靴べらのような形をしているのに対し、ガチョウの嘴は基部が厚く、横から見ると三角形に見えます。シナガチョウではその上、上嘴の基部に瘤があります。

アヒル

ヨーロッパガチョウ(写真:池内俊雄)

ガチョウやアヒルに限らず、現生の鳥にはいわゆる「歯」はありません(化石鳥には歯があったものが知られています)。今回ご覧になった嘴のギザギザは、正確には板歯(ばんし)と呼ばれるガンやカモ、ハクチョウの嘴にあるものです。歯という字が使われていますが、歯ではなく、上嘴と下嘴の縁が櫛の歯状の構造をしているものです。よく知られているカルガモにも板歯はありますが、下の嘴を上の嘴が覆うようになっているので、嘴を大きく広げないとなかなか見えないでしょう。野生のガンの仲間のハクガンやヒシクイは、望遠鏡や双眼鏡などを使った観察で板歯が見やすい種です。

板歯にもさまざまな形状があるのですが、特徴的なのはハシビロガモという嘴の先端が大きく平らになっているカモの一種の板歯です。櫛の歯状になっている板歯で、水面に浮遊するプランクトンなどを濾し取って食べることができます。

既に述べたように、板歯のあるガン、カモ、ハクチョウの仲間ばかりでなく、現生の鳥類にはどの仲間も歯がありません。我々人間を含む哺乳類は、咀嚼(そしゃく)といって歯で食べ物を噛んで、細かくしてから飲み込み、消化しやすくしています。鳥は歯で咀嚼する代わりに、食物は丸呑みにして、それを胃で細かくするのです。鳥には一般に腺胃と筋胃という2つの胃がありますが、筋胃は分厚い筋肉でできていて、内側はやすりのようにざらざらの固い壁になっていて、中に石をたくさん飲み込んでいます(飲み込まれた石を胃石と呼びます)。その胃を動かして丸呑みしたものをすりつぶしています。

ハシビロガモの板歯(写真:神戸宇孝)

(文章協力:神戸宇孝)

サカツラガンを観察しました

絶滅危惧種のサカツラガンを観察しました。貴重な記録と思うのですがどうでしょうか

これはサカツラガンを飼いならして、家禽化したシナガチョウです。シナガチョウとサカツラガンの羽色はよく似ていて誤認されますが、野鳥であるサカツラガンは当然ですが飛翔することができ、体がスマートで、シナガチョウのようにお尻がでっぷりと大きくはありません。また、サカツラガンは嘴の基部にシナガチョウのような瘤はなく、頭部から嘴にかけてすらりと尖って長いという点も見分けのポイントになります。ちなみに、シナガチョウの羽色は原種のサカツラガンに近い色彩を保っている個体以外にも、純白の羽衣をしているものがあり、さらに、まだら模様になっているものなど、バリエーションが見られます。

シナガチョウ(写真:Piyanan Asawathanatpong)

サカツラガン(写真:中野久夫/我孫子野鳥を守る会)

ガチョウには、シナガチョウのほかに、ユーラシア大陸の西側でハイイロガンを家禽化して作られたガチョウ(ヨーロッパガチョウ、セイヨウガチョウ)がいます。ヨーロッパガチョウは、フォアグラを作るために利用されることでも知られています。原種のハイイロガンによく似た全身灰色を基調とした色彩を保っているもの、純白の羽衣をしているもの、まだら模様になっているものが見られます。

サカツラガンは昭和の初め頃には東京湾の干潟に100羽ほどが定期的に飛来していたようですが、徐々に減少し、1950年ごろには東京湾への飛来もなくなってしまいます。現在は各地の水鳥生息地に、単独あるいは数羽が稀に渡来する程度になっています。農地開発や乾燥化による繁殖地の喪失や、狩猟などにより生息数が激減しており、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは危急種(VU)に指定されています。

一方、近年、関東の一部では公園で飼育されているサカツラガンが繁殖し、ごく近い園外へ移動する例が知られています。一見、減少した野鳥が増えて良いように思われますが、飼育下から逸出した個体が野外で繁殖して増えると、従来保たれていた種内の遺伝的多様性が損なわれる可能性があり、飼育個体やその子孫は園外へ出ないように管理することが重要です。

(文章協力:神戸宇孝)

2018年1月号 ハチドリが飛んできたのですが?

庭の花にハチドリが飛んできました。スズメよりずっと小さくて、翼が見えないほど早く羽ばたき、空中を前後左右に自由自在に動きながら花の蜜を吸うようすは、テレビで見たのとそっくりでした。ですが友達に話しても、ハチドリは外国の鳥だよと、取り合ってくれません。私が見たのはハチドリではないのでしょうか?

ハチドリを観察したと思われて、びっくりされ、また感激されたことと思います。ですが、残念ながら、ご覧になった生きものはハチドリではないでしょう。

ハチドリは、大きめのハチほどしかない小さな種もいて、花の蜜を専門に採食できるような体のつくりを持った仲間です。おっしゃるように、すばやく羽ばたきながら機敏に飛行し、空中に静止(ホバリング)して花の蜜を吸うのが特徴です。300種以上が知られていますが、分布は南北アメリカに限られており、日本には生息していないのです。

ドウイロハチドリ(コスタリカ、写真:高田令子氏)。300種を越えるハチドリの多くは全長6〜15cm、体重2〜5gで、最大のオオハチドリでも20gしかない。金属光沢のある鮮やかな色彩をしたものが多い。

地理的に分布していないという点に加えて、ハチドリの生態を考えたときに、花が一年中咲いていて蜜が常に手に入らないといけないということがあります。鳥は恒温動物ですので、体温を一定に保って常時活発に動き回れることと引き替えに、休みなく栄養を補給していないと生きてゆけません。日本の大部分の地域ではハチドリがいたとしても花がほとんどない冬を越せないでしょう。

この点に関連して、「ハチドリを見た」という問合せのある季節に偏りがあることも興味深い点です。山階鳥研にこの種の問い合わせが寄せられるのは、年に1回あるかないかですが、長期の実績を集計してみると、グラフのように9月から11月に集中しています。南北アメリカのハチドリでも高緯度地方に分布するものは冬は暖かい地方に渡るものもあるということですので、仮に冬に見られないことはおかしくないと考えても、花の沢山ある春先から夏には問合せが寄せられたことがない点が、まさに鳥ではなくて、毎年決まった時期に活発になるような別の種類の生きものが正体であることの状況証拠になっていると思います。

グラフ: ハチドリを見たという問合せの月別件数。山階鳥研広報担当における2008〜2017年の10年間の累計。観察地は、東京都が5件(うち不明の1件を除く4件が区部)、神奈川県茅ヶ崎市1件、兵庫県西宮市1件で比較的都市化された地域からの質問が多かった。山階鳥研の広報には年間に500件を越える各種問合せが寄せられるが、月ごとの件数に極端な増減はない。

実際に、日本でハチドリに似て見える昆虫がいることが知られています。スズメガ科というグループに属するガの仲間です。ご覧になった「ハチドリ」も、よく観察すると、鳥にはない触角が見えたのではないかと思います。蜜を吸う口も、ハチドリなら嘴(くちばし)は柔らかくは見えませんが、ガですから、とても細く柔軟な、ぐるぐると巻き取る方式の「口吻(こうふん)」だったことがわかったでしょう。

生け垣のアベリア(ハナゾノツクバネウツギ)の花に飛来したホシホウジャク(2015年10月3日、東京都台東区上野公園)

季節的なことも含め、日本蛾類学会会長の岸田泰則さんにうかがったところ、次のようなコメントをいただきました。

「ハチドリに間違えられるのはガの仲間のうち、スズメガ科のホウジャク類というグループだと思います。漢字ではまさに『蜂雀(ほうじゃく)』と書きます。都市部でも数種類のホウジャク類が分布していますが、一番多く、一般の方が見かけるのはホシホウジャクだと思います。このホシホウジャクは、南の地方から移動してくるようで、秋になると個体数が増えます。その理由や詳しいことはよくわかっていませんが、秋になると、アベリアやその他の多くの花に吸蜜に訪れる姿が都市部の公園でも見られますね。」

生花店の花に飛来したホシホウジャク。長い口吻と、頭部から左右に伸びた触角が見える(2017年10月7日、神奈川県川崎市、写真:中村恵美氏)

ハチドリはやはり、テレビの中以外では、アメリカ大陸に出かけて観察するしかないようです。残念でしたが、これからも野外のいろいろな生きものに関心を持って接していただければうれしいです。

(まとめ・写真(クレジットのないもの) 平岡 考 広報ディレクター)

2016年9月号 台湾のフクロウ類の目玉模様の意味は?

台湾にバードウォッチングに行ったときに、ヒメフクロウという小型のフクロウを観察しました。この鳥の後頭部には目玉のような模様があり、後ろ向きの姿を見て、最初は、こちらを見ているのだと信じてしまいました。人間も騙されるこの模様にはなにか意味があるのでしょうか?

ヒメフクロウの後ろ姿(上)と振り返って顔を見せたところ(下)(2016年1月、台湾太魯閣(タロコ)渓谷)

目玉模様は、チョウやガの翅(はね)、また魚の尾びれ近くなどにもあり、古くから生物学者の関心を集めてきました。ヒメフクロウの属するスズメフクロウ類(Glaucidium属)は世界に30種以上分布し、目玉模様のあるものとないものがいます。ここでは、スズメフクロウ類をはじめとした猛禽類の後頭部の目玉模様について検討した論文()をもとに、どんな説があるかをご紹介します。

言葉の説明ですが、以下に出てくる「モビング(擬攻)」というのは、小鳥類などの鳥類が、フクロウ類やタカ・ハヤブサ類などの、潜在的な捕食動物にわざわざ近づいて、群れて騒ぎ立てる行動をいいます。モビングには、捕食動物に攻撃をあきらめさせる、追い払う、さらに経験の少ない若い同種個体に危険な捕食動物を教える効果があるといった説があります。きわどい安全圏から捕食動物にまとわりついてはやしたてるのですが、ときに逆襲にあい、捕食されてしまうこともあります。

この論文で検討されている、目玉模様の存在理由についての仮説は大きく分けて、身を守るためというものと、餌を採るためというものに分けられます。身を守るためというのは、たとえば、もっと大きな猛禽類がスズメフクロウ類を襲おうとしたときに、目玉模様があることで、自分が見られている、気づかれていると思ってあきらめる効果が期待できるというものです。あるいは、モビングの場合も同じですが、攻撃する側が、目玉模様にまどわされて間違った方向から攻撃することになり、攻撃の効果が減少するということも考えられます。

一方、餌を採るためというのは、ひとつには、小鳥類にわざわざモビングをさせて、すきを突いて小鳥を捕食するためということです。小鳥類がフクロウ類をモビングするときは、安全のためにフクロウ類の後ろからモビングします。目玉模様によって、通常後ろからモビングする小鳥類が、間違えて正面から来れば、フクロウ類にとっては不意をついて捕食するチャンスが生まれることになりそうです。餌を採るための第二として、小鳥類は自分のヒナが近くにいる時に激しくモビングするので、フクロウ類としてはその激しさから、餌になりやすいヒナが近くにいそうかがわかり、どこで狩りをすればよいかの判断材料になるという推測が成り立ちます。

このうち著者らは、身を守るためという説より、餌を採る助け、つまりモビングを誘うことで小鳥類を捕食することができるという説がよりありそうだと述べています。その理由のひとつは、スズメフクロウ類は、開けた環境に生息する種が小鳥を多く捕食し、かつ目玉模様がある一方、森林に生息する種は小鳥を捕食する割合が少なく、かつ目玉模様がない傾向があるということです。目玉模様のある種は昼行性で開けた環境に棲み、しばしば目立つところにとまるなど、日中に目立つかたちで狩りをすることが知られており、小鳥類のモビングを誘っているという仮説によくあうのです。

しかしこの結論は状況証拠からの推論に過ぎず、直接の証拠で確かめられたものではありません。著者らは最後に、今後、模型による野外実験や、実際の狩りの場面で何が起こっているかの観察事例の蓄積が必要だと結んでいます。

(注)Negro, J. J. et al. 2007. Deceptive plumage signals in birds: manipulation of predator or prey? Biological Journal of the Linnean Society, 90: 467-477.

(まとめ・写真 平岡考 広報コミュニケーションディレクター)

2013年3月号 カラスのおでこの形は頭の骨の形ですか?

ハシボソガラスとハシブトガラスを見分けるのに、おでこがなだらかだとハシボソガラス、でっぱっているとハシブトガラスだと教わりました。ですが、でっぱっているはずのハシブトガラスでもそう見えないこともあります。そもそもおでこの形はこの2種の頭骨の形の違いを反映しているのですか?

ハシブトガラス。本種は嘴が太く、嘴峰(嘴の上縁の輪郭)が強く湾曲しているほか、額がでっぱって見えることが多い。

ハシボソガラス。本種は嘴がやや細めで嘴峰の湾曲はきつくなく、額はなだらかに見えることが多い。

ハシボソガラスとハシブトガラスは、体が黒いカラス類の中で日本でもっとも普通な2種で、そのため、両種の見分けはバードウォッチングの手ほどきを受けるさいに一番最初に教わる知識のひとつのようです。

両者の見分けのポイントとして、おでこを見なさいということは多くの図鑑に書いてあり、また実際探鳥会指導の現場でもしばしば言われます。たとえば手元の図鑑では、「上嘴はある程度、湾曲している。額は出っぱらない」(ハシボソガラス)、「額が出っぱり、嘴は太くて、上嘴の先は著しく湾曲している」(ハシブトガラス)として、嘴の太さと共に額のでっぱりを識別点としてあげています。(

実際に野外で観察する時も、嘴の太さはしばしば判断に迷う場合があり、むしろおでこのでっぱりのほうが見やすい場合が多いものです。ですが一方で、とくにハシブトガラスで、おでこがでっぱっていない状況を見ることがあり、「おや?」と思う場合もあることは多くのウォッチャーが経験ずみでしょう。

左)頭部の羽毛をねかせたハシブトガラスと、
右)頭部の羽毛を立てたハシボソガラス
実はカラスたちは頭の羽毛を立てたりねかせたりできる。

今回の質問をいただいて、カラス類の骨格の研究を進めている山﨑剛史研究員にカラスの頭骨を見せてもらいました。画像を見てください。ハシボソガラスとハシブトガラスは、嘴の太さ、嘴峰(上嘴の上縁の輪郭)の湾曲に大きな違いがありますが、嘴のつけねより後ろの部分の形はほとんど区別がつかないほどよく似ています。

2種の頭骨 我々が普段見る嘴は、この骨の上に角質(ヒトの爪を作っている材質)の鞘がかぶっている。両種を比較すると、上嘴の太さには明らかな違いが見られるが、額の部分の傾斜の違いはごくわずかなことがわかる。

ご覧のように、この2種のおでこのでっぱりの違いは頭骨の形によるものとはほとんど言えないことがわかりました。おでこの輪郭の違いはおもに頭部の羽毛を逆立てているかどうかによっているのです。その証拠に、ハシブトガラスでも羽毛をねかせて額がなだらかに見えるときもあり、ハシボソガラスでも羽毛を立てておでこがでっぱって見えるときがあります。

(注)高野伸二著『 フィールドガイド日本の野鳥 増補改訂版』日本野鳥の会(2008年)

(まとめ・写真 平岡考)

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2011年3月号 ボートレース場に大群で飛来した鳥は?

群馬県みどり市のボートレース場で、ナイター照明でレース中に水面に鳥が沢山飛来し、レースを一時中断する事態になりました。ボートにぶつかって死んだ鳥もいるのですが、何という鳥かわかりません。再発防止のために取れる対策はあるでしょうか。

ボートレース場に飛来したアカエリヒレアシシギ(画面下方の白い点)(写真は2点とも桐生ボートレース場提供)


電子メールで送られてきた画像を見るとアカエリヒレアシシギという外洋性の海鳥でした。ヒレアシシギ科に属するこの鳥は、スズメよりやや大きい程度の小さな鳥です。外洋を航行する船に乗ると、海面近くを紙吹雪のように飛ぶ群れを観察することができます。ボートレース場の方の談話にある水面での行動は外洋で観察できる典型的なアカエリヒレアシシギの行動のように思われます。

アカエリヒレアシシギは、渡りの時期に悪天候に遭うと、内陸に群れで入り込むことがあり、野球のナイター照明などにぶつかった事例が過去にも知られています。古い事例ですが、東京都文京区の後楽園球場が現在の東京ドームのように屋根付きでなかった頃、ナイター照明に鳥が飛来して試合が中断した事例で、種名がわかる4例のうち、3例はアカエリヒレアシシギのものだったそうです(高野伸二「原色・自然の手帖 野鳥」)。今回の飛来当日も前線が本州を南下し、荒れ模様だったため、内陸に迷行したものでしょう。

アカエリヒレアシシギの内陸迷行は天候に左右され、場所も日付も予測が困難で、頻度も低いため対策は立てようがないと思われましたので、そのように回答しました。

アカエリヒレアシシギは、ユーラシアと北アメリカの北極地方で繁殖し、熱帯の海洋で越冬します。日本には主に春と秋の渡りの時期に海上で見られますが、内陸の水面にも入ることがあります。

桐生ボートレース場(関東開発(株))企画課担当者の談話

飛来当日の2010年9月23日は、14時30分に第1レースがあり、最終の第12レースは20時40分ごろ終了しました。ボートは直線で時速80kmほど出ます。1回のレースで水面を3周し、約3分かかります。16時30分にナイター照明を点灯、鳥は17時50分ごろ飛来しました。目視による概数ですが1000羽ほどいたようです。水面に集まって着水するので、レースへの支障を防ぐためレースの合間に2隻ほど船を出して追い払おうとしましたが、船が近付いてもぎりぎりまで飛び立たず、船が通りすぎると着水してしまいます。

レースの合間に船を出すと、引き波が立ってかえってレースに支障が出るので、結局鳥がいるままレースをすることにしました。レースの間、鳥は飛びたっては降りるのを繰り返しました。高速のボートが近付いても直前まで飛び立たないので、ボートに入ってしまう鳥もおり、水面上にも少数の死体が落ちていました。9羽の鳥を回収、6羽が死亡しており、3羽は生きていました(うち1羽は翌日死亡)。最終レースの終了後、ナイター照明を消灯し、その後鳥がどうなったかはわかりません。翌日朝にはいませんでした。その後は飛来はありません。ボートレース場は2010年で54年の歴史がありますが、過去にこういう事例があったということは聞いたことがありません。

ボートに衝突したアカエリヒレアシシギ

(まとめ・イラスト・写真(クレジットのないもの) 平岡考)

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2009年3月号 朝青龍が使っている薬効のある鳥は?

大相撲初場所で優勝した朝青龍は、肘の故障の治療のため、モンゴルの伝説の鳥「ホイログ(ホイロク)」のスープを飲んでいたそうです。漢方薬のような効能のある鳥だそうですが、何という鳥ですか。

大相撲初場所も後半戦に入ったある日、マスコミから広報室に右のような内容の問い合わせの電話がかかってきました。わかりませんという答えをして電話を切ったのですが、たまたまモンゴル国立大学の鳥類研究者スンデヴ・ゴンボバートルさんが来日していることがわかり、会う予定がある所員に頼んで、聞いてもらいました。

ゴンボバートルさんによると、ホイログはセッケイだそうです。セッケイは漢字で書くと「雪鶏」で、英名のSnowcockと直訳の関係にあるようです。キジの仲間で、アジア中央部の高地に5種が知られており、いずれも体型はニワトリに似てどっしりとした体と頑丈な脚をしています。モンゴルに分布するのはこのうち、アルタイセッケイ(右図)です。図鑑によると全長約57センチ、オスの体重は約3キログラムといいますから、日本のキジの2〜3倍も重い大きな鳥です。高い木が生えないけれども万年雪には覆われていない、標高の高い荒れ地に生息するそうです。

ゴンボバートルさんの話によると、薬効はチンギス・ハーンの時代から信じられており、それを食べた兵士の肉もまた傷に効くと信じられているそうです。入手が困難で、一般には狩猟できないが、傷の治療目的での狩猟が認められるとのことでした。山階鳥研にある図書でも、デル・ホヨほか(編)の世界の鳥類ハンドブックという本に「チベット医学()で以前に増して使用されるようになったと考えられている」という記述が見つかりました。標高の高い厳しい環境に生息しており、手に入れづらいところはいかにも御利益がありそうですね。

(注)分布から考えて、「モンゴル医学」の誤りでしょうか。

(まとめ・イラスト 平岡考)

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2008年3月号 アホウドリはどこに行けば会えるの?

大好きな『やん坊にん坊とん坊』のお話に出てくることから、幼稚園のクラスの子供たちがアホウドリに関心を持ちました。いろいろ調べるうちに、『アホウドリが見たい』という声があがり、『鳥島に見に行こうか』という話になりましたが、多くの子どもが『火山が噴火したらこわいからいやだ』と言っています。もっと身近にアホウドリを見ることができないかをうかがいたく、手紙をお出ししました。

ご紹介したのは、2007年10月に届いた、東京世田谷区の和光幼稚園の星1組の園児の皆さんの質問に添えられた、担任の中澤彩子先生のお手紙(写真1)のあらましです。

広報室(当時)からの返信です。
広報室からは、鳥島以外でアホウドリに必ず会える場所はないこと、鳥島はアホウドリを守るために島そのものが天然記念物になっているため、特別な許可がないと上陸できないことを、ひらがな書きの手紙で伝えました。また、所員は鳥島に15年以上通っていて大きな噴火にあったことはないので、そんなに心配はいらないこと/それでも地面は温かくて、アルミホイルに包んだカボチャを埋めるとほくほくおいしい温泉カボチャができること/現在、噴火の心配のない小笠原の聟島という島に安全な住み場所をつくろうとしていること/鳥島近海を周遊する「クルーズ」の豪華客船に乗ればアホウドリは見られるが、みんなのお小遣いでは乗れそうもないことも追記し、「あほうどりにあいにゆくのは、みなさんがもっとおおきくなるまで、おあずけといういうことになりそうです。」と結びました。

しばらくして、折り返しお手紙をいただきました。先生のお手紙のあらましです。
「『てがみくるかなー』と、とても楽しみに待っていましたので、手紙が届いた日はクラス中、大騒ぎでした。

子どもたちは、地面の熱でカボチャがやわらかくなるというところが一番驚きだったようです。豪華客船におこづかいでは乗れないというところでは、『のれるよー!せんえんもってるもん!』『ぼくもー!』という声がたくさんあがっていました。また、もし噴火してしまったら山階鳥類研究所の人たちが危ないということも心配していました。

一番落胆したのは、『アホウドリには会えない』ということでしたが、『じゃあどのくらいのおおきさか作ってみたい』という声があがり、子どもたちと翼のさしわたしが2.4メートルのアホウドリをつくりました(右写真)。本当にびっくりする大きさでよけいに見てみたくなってしまいました。毎日のように数人で抱えて飛ばせている子供たちです」

アホウドリの心強い味方ができたようです。楽しい写真(写真2)も送っていただきました。星1組の皆さん、これからもアホウドリのことを忘れずに応援してくださいね。

写真1 星1組のこどもたちから広報室へ届いた手紙

写真2 星1組のこどもたち

(まとめ・写真 平岡考)

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2007年7月号 パイロンで営巣したシジュウカラ

大学の門に置いてある車よけのパイロン(円錐標識、コーン)にシジュウカラが巣を作りました(写真1)。珍しいでしょうか。

シジュウカラはもともと樹洞営巣性といって、木のうろに巣を作る習性の鳥で、人工の巣箱をよく利用する鳥として知られていますが、ほかにもさまざまの人工的な空洞に巣を作った例が知られています。編集者は、写真の例以外に、10年程前にもパイロンの例を見せていただいたことがありますし、ブロック塀での営巣(写真2)も観察したことがあります。文献(注)には、ほかに横倒しにした焼酎のかめ、伏せておいた植木鉢などの例が挙げられており、適当な空洞があればいろいろのものを利用することがわかります。ことによるとこれは、現代では樹洞のあるような大木が少ないことも一因なのかもしれません。

また、シジュウカラに限りませんが、自然の樹木等で営巣する際も、人間のすぐそばで平気で繁殖する例をしばしば耳にするようになりました。以前は野鳥の巣を見ると捕まえようとする子供などが必ずいたものでしたが、近年はそういった人がいなくなったことが原因なのでしょう。

写真1 矢印の赤白のパイロンの中にあり、鳥は頂点の穴から出入りしていた。守衛さんによると黄と黒の棒は営巣発見後設置したもの。5月19日におそらく4羽巣立ちしたとのこと(2007年5月13日 千葉県・東京大学柏キャンパス)

写真2 ブロック塀の中に営巣して、上面の穴から餌を運んでいた例。この例は巣立ちまで行かなかった(2001年5月5日 千葉県我孫子市内)

写真3 シジュウカラの自然樹洞での営巣。シジュウカラに限らず、頻繁に人通りのある場所の、人の手の届くような高さでの営巣例を特に都市部や住宅地でしばしば聞くようになった(1999年5月21日 東京都千代田区内幸町交差点)


(注)浦本昌紀(1966)「鳥類の生活」紀伊国屋書店

(まとめ・写真 平岡考)

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