研究・調査

2017年4月21日掲載

クジャクの羽の発色を再現した構造色の材料を作成しました

山階鳥研の森本元(もりもと・げん)研究員(自然誌研究室・保全研究室)は千葉大学の研究グループとの共同研究で、クジャクの羽の発色機構のもとになる微細構造とそれらを構築しているメラニンを構造・素材ともに模倣し、構造色を基盤とする材料を作成しました。

構造色は、光の波長と同等あるいはそれ以下の微細構造に光が当たり、反射して得られる色を言います。素材そのものは透明なのに虹色に見えるCDやシャボン玉が身近な例です。構造色と対比される、色素による色が、時間が経過すると色あせるのに対し、構造色は構造が保たれている限り色あせず、構造色のインクが実現できれば、従来の色素によるインクにはない独特の光沢を持たせることができることから、近年盛んに研究開発が進められています。

鳥類の羽毛には金属光沢や虹色光沢の構造色を持つものがあることはよく知られていますが、この研究は、クジャクの羽毛の構造色を模倣した生物模倣(バイオミメティクス)の研究で、クジャクの羽毛の発色機構のもとになる微細構造と、それらを構築しているメラニンを、構造と素材のふたつの点から模倣した材料を作成しました。

この研究では、クジャクの構造色の基礎となるメラニンを模倣する際に、コアーシェル型粒子と呼ぶ、内部のコア(核)となる部位と、外部のシェル(殻)となる部位からなる複合粒子を作成しました。そして、コアの部分とシェルの部分の構造を化学的に調整することで、発色のフルカラー化が可能であることを示しました。さらに、見る角度により色が変わって見える「虹色構造色」と色が変化しない「単色構造色」を容易に作り分けることが可能になりました。

この研究は、構造色を用いる次世代インクの開発の基盤となる重要な研究です。

森本研究員は、「私は鳥類の羽毛内の構造の仕組みと発色メカニズムについて協業しました。生物学者の知識と化学者の方々の知識・技術が合わさった良い成果が出せてよかったです」と述べています。

写真:構造色により発色するクジャクの羽毛と新材料

構造色により発色するクジャクの羽毛(左)と新材料(右)

*この研究の成果を、下記論文に発表しました。
Kawamura, A. et al. 2016. Full-Color Biomimetic Photonic Materials with Iridescent and Non-Iridescent Structural Colors. Scientific Reports 6, Article number: 33984: doi:10.1038/srep33984

*千葉大学の研究グループと共同で報道発表をしました。

『山階鳥研ニュース』 2016年11月号より

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