7.2 法体系の整備


 次に提言したいことは、行政側からの法的制度の整備である。前述のドバトを人間の管理下に置くための施策でも若干法的規制が必要なことに触れたが、それらを施行するにもドバトを扱う行政権が分散しているのが現状であり、これらの連携を保つ必要がある。

 例えば農林水産省では「飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律」で定めた「家畜等」は、施行令で家禽は「鶏及びうずら」のみで「ハト」は記載されていないが、伝書鳩は実質上特用畜産として畜産局家畜生産課の扱いとなっている。

 他にもドバトを捕獲する場合には都道府県を通じて環境庁が、厚生省関係ではドバトが忌避する薬剤の安全性に関しては薬務局安全課が、公衆衛生に関しては公衆衛生局地域保健課が、環境整備面では工業地帯を含む都市部の糞害やドバトの食物となるゴミ類の清掃に関してと、ドバトの処分に関しては環境衛生局水道環境部環境整備課が、建造物の構造に関しては環境衛生局企画課などがあり、農地の利用、耕作方法に関しては農林水産省などと、ドバトに関与できる関係機関をあげることができる。これらを一括して体系づけられた法的な規制でドバトが増加しないような環境を整える必要があろう。6で述べたように、フランスではパリ市の衛生規制でドバトへの餌付けを、条例により近隣に迷惑を及ぼしたり、ネズミ類を招く恐れのある場合は禁止している。さらに家主、借家人に掃除や営巣場所の閉鎖を義務づけている。また、パリ市の一機関が市内のドバトの対策を引き受け、ドバト防除のために避妊薬を使用したり、捕獲を行っている。このような実際面での施行機関が日本においても必要であろう。

 捕獲上適用を受ける法律については、「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」がある。この法律について若干問題点を述べてみる。

 この法律の適用を受けない場合はドバトの所有者が明らかな場合であり、不明な場合は無主物とみなされ、法的手続なしでは捕獲できない(現実には所有物か無主物かの判定は難しい)。  その理由は、狩猟鳥獣の種類が定められ、それ以外は狩猟の対象とならず自動的に保護鳥となったことによる。しかし、保護鳥であっても有害鳥獣駆除の特別許可を受ければ捕獲できる。

 このようにドバトを捕獲するのに法的手続が必要であると認識している人は少なく、手続の必要のない野良犬、野良猫、ノネズミ、モグラと同様であると誤認されている場合が多い(ただしノイヌ、ノネコは狩猟獣)。

 ドバトを狩猟鳥とする意見にも難点が多い。狩猟鳥を捕獲するには狩猟期間に手どりや投石で捕獲する以外は狩猟免許が必要で、指定された法定猟具、期間、場所が限定され、ヒナ・卵も捕獲と採取が禁止となる(ドバトの卵は現在、有害鳥獣駆除を環境庁長官に申請すれば採取できる)鳥類なので「わな」が使用できず捕獲箱が使えない、法定猟具としての網(甲種免許)は使えるが銃(乙種免許)は銃猟禁止区域の都市部のドバトには使えない等種々問題があり現実的でない。

 捕獲に関しては野良犬、野良猫同様野良鳩という扱いで保護鳥、狩猟鳥の範囲から除外されることを期待したい。しかし、現行の許可制度は実態把握の上と、捕獲目的以外の鳥獣を保護する上で有益であると考えられるので、よい点は残した上での実施が必要であろう。



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