4.4.2 伝書鳩の野外への定着の可能性


 伝書鳩が野外に定着する可能性には、次のような場合が考えられる。

1.飼育者の管理未熟の場合

2.飼育途中の鳩舎外失踪の場合
 伝書鳩(レース鳩)は、初心者の飼育管理が未熟のため、訓練途中に伝書鳩が失踪した記事がしばしば関係の雑誌等に掲載されている。

3.レース途中の失踪の場合
 伝書鳩のレースへの参加は、優秀な個体を作り出すためのものであり、当初から参加個体がすべて帰還しないことを予想している場合もある。また一部にはレースに参加させることによって、不必要になった伝書鳩を処分していた。

 もうひとつには本来の意味の失踪で、天候その他の理由から方向判定ができずに放鳥地に再びもどったり、他の鳩舎等に迷行する場合である。多摩動物公園内のドバトの塒内に、レース途中のゴム輪の付いた伝書鳩が就塒していた例もある。

4.飼育中止に伴う野外への放鳥の場合
 伝書鳩飼育者からの聞き取り調査では、進学・就職・家屋の新築の折、飼育ができなくなり、引き取り者がいないため野外に放鳥した例が佐渡で得られている。一例では、伝書鳩飼育中止に伴い鳩舎の入口を閉じ、一時期鳩舎の外に餌を播き、その後何らの世話をしなかったという報告がある。別の例は、伊豆半島の波勝崎で得られた。波勝崎のサルの餌づけ担当者は、しばしば伝書鳩を捨てにくる人がおり、これらの個体がサルの餌である小麦を採餌し、一部は定着しているという。

 これら2ヶ所の地区には、海岸の洞窟内に就塒するドバトがみられ、足環の付いたドバトもその塒のなかで観察されている。これは伝書鳩の処分ができずに放鳥し、野外に定着した例と言える。


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