2.2.2 ドバトの有害駆除の地域的特色

 有害駆除によるドバトの捕獲羽数は、1962年から1976年まで、全国の累積で約39.5万羽である。都道府県別にみると、愛知、神奈川、東京の累積捕獲羽数が高く、3県で全国の約48%を占める。このように、この捕獲羽数が地域的にかたよりがあると考えられるため、全国的に比較する方法のひとつとして、県別の1km2当りの捕獲羽数をもとめた(表2.6)。この結果、神奈川、愛知、東京など15県が全国平均の1.06羽/km2より高い「駆除密度」地域であった。このような地域は、この駆除密度を5段階に分類すると、次のような傾向が認められる。

  1. 関東以南の県に多い。
  2. 太平洋沿岸に面した県に多い。
  3. 第二次産業の比較的活発な県に多い。
 つまり、「太平洋ベルト地帯」と呼ばれる地域が、ドバトの駆除密度の高い地域で、ドバトの被害・予防対策として積極的に捕獲している。一方、駆除密度の低い地域は、東北・北海道を中心に、関東・中部の山岳県、中国・四国・九州南部(沖縄含む)に広がっている。
 次に、ドバトの有害駆除の実施の年代的・地理的特徴についてみた。1962年の実施県は、長崎1県で、1963年佐賀、1964年岐阜・福岡・長崎と続く。図2.3は3年ごとの実施県の地理的配置を示した。ドバトの有害駆除は、九州ではじまり、次に関東以南の各県で実施され、その後北上していることを示している。なお、1962年より8年後には28県、14年後には43県でドバトの有害駆除が実施されていた。このことは、この駆除が短期間のうちに各地域で実施されたことを示している。なお、青森、岩手、宮城、沖縄県は、現在までドバトの有害駆除が実施されていない。

以上、鳥獣関係統計資料からは、ドバトの有害駆除が1960年代からはじまり、短期間のうちに全国的に実施されるようになり、太平洋ベルト地帯での駆除密度が高いといえる。


表2.6 ドバトの駆除密度(単位:羽/km2
都道府県名 駆除密度
神奈川 23.79
愛 知 20.37
東 京 13.71
佐 賀 4.44
長 崎 3.85
大 阪 3.53
奈 良 3.42
三 重 2.82
滋 賀 2.46
静 岡 2.20
千 葉 2.18
富 山 1.60
山 口 1.47
岡 山 1.26
兵 庫 1.14
福 岡 0.99
都道府県名 駆除密度
香 川 0.96
長 野 0.95
岐 阜 0.90
鹿児島 0.80
埼 玉 0.74
和歌山 0.61
京 都 0.58
熊 本 0.54
群 馬 0.53
大 分 0.40
鳥 取 0.29
栃 木 0.22
福 井 0.20
宮 崎 0.19
徳 島 0.13
福 島 0.12
都道府県名 駆除密度
高 知 0.10
北海道 0.09
茨 城 0.07
島 根 0.07
愛 媛 0.07
新 潟 0.05
山 梨 0.04
石 川 0.02
広 島 0.02
山 形 0.01
秋 田 0.00
青 森 −  
岩 手 −  
宮 崎 −  
沖 縄 −  
全 国 1.06
注:駆除密度=各県の有害駆除による累積捕獲羽数(羽)/都道府県面積(km2



図2.2 ドバト駆除密度の地理的分布
(有害駆除による1962年から1976年までの累積のドバトの捕獲羽数を各県の1km2当りの捕獲羽数より計算した。)

図2.2




図2.3 ドバトの有害駆除の地理的実施状況

図2.3


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