「鳥類アトラス(鳥類回収記録解析報告書)」
 (1961年~1995年)(2002年3月発行)

はじめに

  環境省の鳥類標識調査事業で得られた回収記録の総括的な解析は、すでに1985年に実施し、その結果を『日本の鳥類標識調査(昭和36年~昭和58年)』としてとりまとめた。これは101種の鳥類に関してその移動回収地図が種毎に表示されており、日本の鳥類の渡りを知る上でこれまでにない画期的な資料であった。その後得られた回収記録に関しては、一部を「注目に値する回収例」として、毎年の報告書に掲げてきた。しかしこれら新たに得られた回収記録は膨大であり、多くの興味深い知見を含んでいるにもかかわらず、種類毎にまとめられていないため、利用するには不便であった。


 そこで山階鳥類研究所では、数年前より当研究所が保管している1961年以降の全回収記録を、過去にさかのぼってデータベース化する作業にとりかかり、スズメ目を1995年度までに、非スズメ目を1996年度までに終了した。これと前後して、多数の回収記録を条件に応じて地図上にプロットし、鳥類の移動実態を表示させるプログラムを開発した。これによって作図にかかる手間と時間を極端に削減することができるようになり、多量のデータを有効に活用できることとなった。

 今回「鳥類アトラス」としてまとめるに際して、上記の記録の中から特に回収記録が多く得られていて興味深い、非スズメ目48種・スズメ目26種を対象とし、1種1枚の原則で回収記録を地図に表示した。ただし例数の多い種では、条件によって数枚に区分した。そして、個々の種の回収地図に可能な限り解説を加えた。取り上げた項目は、回収例数・移動実態・放鳥場所毎の特性・繁殖地や越冬地の解明・移動コースの推定・移動速度・経年変化・特殊例などである。

 とりまとめに当たっては、佐藤文男・茂田良光・米田重玄ら標識研究室員全員で計画から種毎の解説を分担した(分担者名は巻末参照)。作図および全体のレイアウトは馬場孝雄が担当した。日常的なとりまとめは、放鳥記録を吉安京子、回収記録を三田村あまねが担当した。また、種毎の「形態」・「分布」・「生態」の各項目及び文章全体の校正等には、協力調査員の亀谷辰朗氏の多大な協力を得た。

 本報告書の大部分の記録は、全国の400名以上のバンダーの方々の多大な努力によるものである。なお、1960年代の記録にはMAPS(米国の移動動物病理学調査、E.McClure主導)によるものが多く含まれている。これまで国内外から回収報告を寄せられた方々のご協力、地方自治体や諸団体のお力添え、各国のバンディングセンターとの連携などがこの成果を生み出したことを明記し、心から感謝の意を表する。
さらに環境省と担当官の方々、様々な形で協力いただいた山階鳥類研究所の職員、とりわけ吉井正前標識研究室長と歴代の室員にお礼を申し上げる。
                 

財団法人 山階鳥類研究所
標識研究室長 尾崎清明

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