1.2 ハト類 3) 9) 21)


 ハト類は、鳥類のなかでも種類の多いグループで、その形態や生活習性に共通したところが多いといわれている。このグループは、分類上ハト科 COLUMBIDAE に属する鳥類の総称で、290種程の種類が知られ、極地地方や高山帯を除いて世界各地に分布している。主な分布地は、熱帯地方で特に豪州・太平洋地域に生息種類数が多く、温帯地方にも分布(亜寒帯地方では極めて少ない)している。おそらくハト類は豪州・太平洋地域で、多くの種類が分化したものと考えられている。

 外部形態は、一般に体がやや太りぎみで、体に比べて頭が小さく、首は細く、全長が大型で約75cm、小型で約15cm、普通20〜50cm程度の大きさである。羽色は、一部の種類を除くと地味なものが多く、雌雄とも酷似しているものが多い。
 ハト類は、もともと森林性の鳥類と考えられ、森林や林縁で生活するものが多いが、なかには草原や半乾燥した地域に生活しているものも知られている。このように種々の生息環境に適応して生活している。

 一般に、営巣場所は樹上で、小枝を使用して皿状の粗雑な巣を作るが地上や岩棚のすき間等を利用することも知られている。普通、一腹卵数は2卵であるが、1卵や3卵のものもある。雌雄で抱卵し、種類によって異なるが、抱卵期間は2〜4週間である。年間に数回繁殖するものが多い。ハト類の繁殖で特徴的なことは、育雛中のヒナに「ピジョン・ミルク」(ハト乳)と呼ばれる餌を与えることである。この餌は、水分・脂肪・タンパク・灰分・ビタミンからなるミルク状のもので、抱卵期間中の親ののう内壁が肥厚し、はげ落ちたもので、雌雄とも分泌する 10)。このため、他の植物食性の鳥類が育雛中のヒナに与える昆虫等の餌を必要とするのに、ハト類は昆虫等の餌の量と無関係に繁殖することができる。

 ハト類の特徴的な行動に水の飲み方がある。このグループは、サケイ類と同様に、くちばしを
直接水のなかにつけ、口腔の陰圧によって水を吸い込むことができる。

 ハト類は大別すると3つのグループに分けられる 9)。ここでは、主に国内に記録のある種類について記載した 15)

a.植物種子食のハト類
 地上採餌と樹上採餌をする種類が多い。このグループは、ドバトの原種といわれるカワラバト、北米で食用乱獲で滅んだリョコウバト Ectopistes migratorius 、ウスユキバト Geopelia cuneata 等が良く知られているが、国内には次の7種類の記録がある。

カラスバト Columba janthina 分布地局地、天然記念物
リュウキュウカラスバト Columba jouyi 絶滅?
オガサワラカラスバト Columba versicolor 絶滅
シラコバト Streptopelia decaocta 分布地局地、天然記念物
ベニバト Streptopelia tranquebarica 迷鳥
キジバト Streptopelia orientalis  
キンバト Chalcophaps indica 分布地局地

b.果実食のハト類
 主に樹上採餌をし、南アジアから太平洋を中心に分布。国内には次の2種が生息している。

アオバト Sphenurus sieboldii  
ズアカアオバト Sphenurus formosae 分布地局地   

c.特殊なハト類

 少数の特殊なハト類で、国内には記録がない。大型で地上性のカンムリバト Goura cristata 、オオハシバト Didunculus strigirostris が知られている。

 なお、国内の記録はドバトを含めると10種類になる。1.1で述べたようにドバトは、野生の鳥類でないということで、鳥類センサス(個体数調査)のときに実際に観察されても記録されないことが多い。しかし、ドバトも記録すべきであるという意見 18) もある。最近の報告のなかには、他の飼い鳥の野生化の観察とともに記録されているものや、都市部の環境指標鳥としてドバトを評価している例 2) がある。


back       menu       next