1.1 カワラバトと「ドバト」


 広義の意味での「ドバト」は、中央アジア、アフリカ、ヨーロッパ等に広く分布している野生のカワラバト Columba livia の飼養品種の総称であるといわれ、200品種以上知られている。この「ドバト」 Columba livia var. domestica は、その利用目的から分けると、通信・運搬・競技の目的で飼育する伝書鳩、食用に供するために飼育する食用鳩、その姿・形・声及び曲芸に価値をみいだし飼育する観賞鳩に分類される。

 伝書鳩の品種には、アントワープ、ホーマー、リェージュ等が知られている。現在では、主に競技(レース)が飼育目的のため、レース鳩ともいわれることもあるが、伝書鳩に統一して使用した。

 ここでいう狭義の意味のドバトは、「ドバト」のうち飼育管理下の禽舎以外で繁殖・就塒している個体を指す。従って、明らかに伝書鳩の足環がついた個体であっても、野外で就塒・繁殖している場合は、狭義のドバトに含めた。

 一部の人は、このドバトをノラバトといい、野生の鳥類ではないと考えている 7) 19)。これは、一度家畜化されたものが、再び野生化したもので、ノラネコやノライヌと同じ意味で使用されている。また、ドバトが野生の鳥類でない理由に、ドバトが原種であるカワラバトと異なる外観を持つまでに家禽化されていることを指摘している 20)。事実、「ドバト」には、品種改良の結果、実に様々な形態や色彩を持つものが多い。

 カワラバトの羽色は、全体に青灰色で、首から胸にかけて金属光沢があり、腰は白く、翼には2本の黒い線があり、尾の縁には黒色の帯がある。伝書鳩には、カワラバトに良く似た羽色のものから、全身黒色、赤褐色、白色のもの、種々の色彩からなるモザイク的な配色のものまで、実に変化に富んでいる。野外でみられるドバトにも、同様の色彩変化がみられている(4.4参照)。

 なお、国内にカワラバトが生息していたという報告 1) 4) もあったが、これらの観察はいずれもドバトの誤報であるとされている 11)。現在の「日本鳥類目録」 15) には、ドバトは記載されていない(初版には、 ? Columba livia intermedia として記載 14) )。



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