ツツドリの雛を育てるセンダイムシクイ





 1935年にロンドンで開催された世界自然写真展(International Exhibition of Nature Photography) に出品された1枚。日本から参加した9人55点のうち、開催後に出版された傑作写真集“Nature in the Wild”に下村が唯一人選ばれた。かつ、一人の作家が4点(他にトラツグミ、ルリカケス、ナベヅル)も収録されたことは、海外でもいかに下村の写真が高い評価を得たかを物語っている。


 巣立ちしたツツドリの雛(右)に仮親のセンダイムシクイが給餌している場面に野外で出くわす機会は少ない。その少ないチャンスに、飛びながら給餌する決定的な瞬間を当時の性能の低いカメラ機材で捉えるのは“神業”と言える。カメラを知り尽くした下村の撮影技術のレベルの高さがうかがえる。


 乾板は、保存作業が始まった時点ですでに破損されていたが、幸いなことに主役の鳥たちはかろうじて劣化も免れている。プリントで残されているのは、AVSK_PM_0109(四切)とAVSK_PM_1112(六切)の2枚のみである。


 上図の「鳥類生態写真集」第2輯 Pl.32掲載写真と下図のガラス乾板とAVSK_PM_0109とを見比べ、同じ乾板からのトリミングの違いを意識して比較鑑賞すると、下村の作品に対する想いが窺えてくる。果たして下村はどちらのトリミングをより良い作品と考えたのであろうか?







AVSK_DM_0001
トリミングで作品の表情は変わってゆく


AVSK_PM_0109





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