自然誌研究室

2015年12月2日更新

図書 ●標本 ●海鳥の生態研究 ●希少鳥類のDNA研究 ●DNAバーコーディング

図書

自然誌研究室は鳥類学に関する国内外の専門学術雑誌や単行本など、広範囲にわたる文献を所蔵しています。その数およそ4万冊にのぼり、国内では鳥類学に関する蔵書数として他に類を見ません。その構成は創立者の山階芳麿の収集した文献に研究者等の寄贈図書をくわえたものを核とし、現在は購入と交換・寄贈により充実を図っています。ここでしか見ることのできない国外の学術書や、石版手彩色図譜等の貴重図書など、現在では入手困難な貴重な資料も含まれています。

自然誌研究室では日本の鳥類学の発展のため、関係図書の収集を意欲的に行うとともに、利用環境の整備をはかり、研究者等の利用に供しています。

2011年2月にはウェブサイト上での蔵書検索(OPAC)をスタートさせました。現在検索できるのは雑誌と単行本の一部ですが、今後、他の図書資料についても順次公開する予定です。

>> 標本・図書の利用方法について
>> 蔵書検索(OPAC)について

書庫

国内で随一の鳥類学に関する蔵書数を誇る図書室

山階鳥研図書の構成

山階鳥研究の図書の多くは、初代理事長山階芳麿博士が収集した文献や、鷹司信輔・黒田長禮両博士をはじめとする鳥類研究者や一般の方々からの寄贈図書を基礎に構成されています。また、分類学、生態学などの各学問分野に関する専門書や国内外の学会や博物館から出版される雑誌等を購入や寄贈、山階鳥類研究所研究報告との交換によって収集しています。

山階鳥研の所蔵雑誌

山階鳥研の自然誌研究室は現在約 2,400タイトルの雑誌を収蔵しています。これらのほとんどは、鳥に関する学術雑誌ですが、各地域の野鳥観察団体や鳥類保護団体などの発行する機関誌やニュースレターなども数多く所蔵しています。

山階鳥研の単行本

山階鳥研は、約11,000冊の単行本を所蔵しています。これらの図書のほとんどは、鳥に関する専門書や鳥類図鑑ですが、自然保護関連の図書や美術書など、鳥に関するさまざまな分野の図書も含まれています。

図書の管理と利用

自然誌研究室では鳥類専門の図書室として鳥に関するあらゆる資料を収集し、有効に利用できる管理体制を整えようと努めています。現在、山階鳥研の書庫は閉架式となっているため、書庫の中に入って自由に本を手にとって見ることはできません。しかし、可能な限り研究者の要望に応じて便宜を図っています。  山階鳥研では、鳥類研究者をはじめ、生き物や自然に興味を持つ人々の一助となる図書室を目指して活動しています(図書の利用方法はこちら)。

山階鳥研の貴重図書

山階鳥研には、主に19世紀から20世紀の初めにかけてヨーロッパで発行された石版・銅版手彩色の鳥類図譜が、約百点所蔵されています。  19世紀前半は博物学の黄金期ともいわれ、多くの生物図譜が出版されました。しかし、石版や銅版手彩色の図譜は完成までに大変な労力や技術を要するため、発行部数も数百部と限られており、発行当時から大変高価でした。  現在では、これらの図譜の多くが戦争や災害等で消失しています。山階鳥研にある貴重図書は、その意味でも貴重な文化的遺産といえるでしょう。  これらの図書は鳥類学上の価値があるだけでなく、大量印刷の技術が未熟だった時代の博物学がどのように行なわれていたのか、博物学の歴史や発達を研究するための資料としても重要です。また、美術的にも製本技術の点でも大変価値が高いものです。これらの図書を消失させることなく次代に引き継いでゆくことも、山階鳥研の責務の一つと考えています。

鳥類図鑑

19世紀に出版された貴重な図鑑も所蔵する。
(英国 の鳥類学者・ジョン=グールド著の鳥類図鑑)

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標本

山階鳥類研究所には、剥製標本・骨格・巣・卵・液浸標本などの、鳥類の標本約7万点を所蔵しています。数の上でもっとも多いのは研究用剥製標本です。

 コレクションは、創立者の山階芳麿ほか日本の代表的な鳥類学者の収集品、および交換・購入等によって集められた内外の標本からなっています。現在は、拾得された斃死体等を受入れて標本を作成しコレクションの充実を図っています(標本の収集・管理)。世界中の代表的な種類が網羅され、特に東アジア・太平洋地域の充実したコレクションは、世界でも指折りのものです。学術的に貴重な標本も多く、すでに絶滅した鳥や希少な鳥の標本や、種の記載の基準となったタイプ標本も含まれています。

標本は利用の便をはかるために整理作業を続けており、研究者の利用に供されているほか、国内外の研究機関からの問い合わせ等にも応じています。

2009年からは標本データベースを公開しています。

>> 標本・図書の利用方法について
>> 標本データベースのページへ

鳥類標本

標本室。世界でも指折りの充実した鳥類標本を揃えている。

標本の収集と管理

以前は鳥を採集して標本を作っていましたが、現在では主に拾得された斃死体や、動物病院などで死亡した鳥を受け入れて標本を作っています。受け入れた資料には番号をつけ、発見した年月日・場所・入手経路などを記録します。資料は解剖して性別や年齢などをチェックし、状態によりどのような標本にするかを決め、所内で処理できないものは外注します。できあがった標本は真空燻蒸し、一つ一つにラベルを付けます。ラベルには受入番号・種名・性別・年齢・採集場所・採集日などを記入し、分類順に標本棚に収納します。標本室は湿度・温度を一定に保つため空調を行い、防虫・防カビのために各棚に薬剤を配備しています。標本室には、紫外線による褪色を避けるため窓が一つもありません。  標本は管理さえよければ半永久的に保存できます。現に山階鳥研の標本の中には百年以上前のものが多くあります。カビなどを防ぐため、標本室への立入りは必要最少限にとどめています。鳥類研究者の閲覧希望には応じていますが、一般の方の見学はご遠慮願っているのもそのためです。

研究用の標本とは?

鳥の剥製というと、博物館などで見かける、鳥が木に止まったようなものを想像されるでしょう。このような標本は主に展示に使われます。展示用剥製は、その鳥がどんな姿をしていたかを知るのには役立ちますが、保管に場所を取りますし、体の各部の大きさを測定したり、いくつもの標本を比較するには不向きです。このため、研究用には研究用剥製(仮剥製)が使われます。研究用剥製は、内臓や筋肉・骨などを抜き、中に薬品を塗った上で綿などを詰め、鳥がゴロンと横たわった形に作ったものです。作成方法が比較的易しく、保管にも場所を取りません。山階鳥研が所蔵する剥製の大部分は、この研究用剥製で、これ以外に展示用剥製や卵・内臓・巣・骨格などの標本があります。

研究用剥製と展示用剥製

標本の利用

標本はさまざまな分野の研究者に利用されます。外部形態を比較して分類を研究したり、野外における識別のために標本を調べたりします。鳥の標本のまとまったコレクションを持っているのは、日本では山階鳥研だけといってもよく、このため、毎年多くの研究者がこれらの貴重な標本を調べるために山階鳥研を訪れます。時には、海外の研究者からの依頼によって、海外に標本を貸し出すこともあります(標本の利用方法はこちら)。

標本の整備

鳥は、同じ種類でも性別、年齢、地域によって羽の色や形態が違うのが普通です。ですから、研究のためには、なるべく多くの個体の標本を集めることが必要となります。現在山階鳥研には、6万9千点という膨大な数の標本が保管されています。このように数多くの標本を研究のために十分に利用してもらうには、標本が種類ごとに整理されていることが必要です。しかし、過去の努力にもかかわらず、未だにそれが完全ではありません。数年前から、分類学者の定めたリストの順に標本を並べ替える作業をおこなっています。また、コンピューターによる標本情報の管理システムを作成する仕事にも着手しています。

絶滅種・希少種の標本

山階鳥研には、絶滅鳥の代表として必ず紹介される北アメリカのリョコウバトやカロライナインコをはじめ、沖縄の森林に住んでいたリュウキュウカラスバトなど、いくつかの絶滅鳥の研究用標本があります。すでに地球上から姿を消してしまったこれらの鳥の標本は2度と手に入らず、かけがえのない重要なものです。また、生息数が少なく絶滅の心配のある鳥の標本としては、サハリンで繁殖するカラフトアオアシシギや、沖縄の森林に住むキツツキの一種ノグチゲラなどがあります。これらの鳥も新たに採集することが難しいので、既存の標本が持つ研究上の価値は、極めて高いといわねばなりません。

カンムリツクシガモ

世界でも非常に貴重なカンムリツクシガモの標本

タイプ標本とは

新種を発見して名前をつける際には、そのもとになった標本をタイプ標本(模式標本)として指定しなければなりません。そうすることにより後の研究で分類に疑いが生じたり、分類が変わったりした時でも、名前の混乱を最小限に食い止めることができるのです。所蔵する博物館や研究機関などは責任をもってタイプ標本の管理をすることが、動物学者の間の国際的取り決めによって求められています。

山階鳥研にはヤンバルクイナ、ヒメシロハラミズナギドリなどの種と、数十点の亜種(種の下の分類単位)のタイプ標本があります。これらのタイプ標本は鳥の分類学の基準となるものであり、科学の世界全体の共有財産です。

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海鳥の生態研究 ~オオミズナギドリの索餌・繁殖生態の解明~

既に希少となった鳥類を保護し、環境を保全するためには、生息エリアに大きな影響かつ類似した習性を持つ鳥類の生物学的な情報が不可欠です。

北海道大学、東京大学と共同で、生息数の大半が日本の島々で繁殖するオオミズナギドリが、周辺の海洋環境の地域的特性をどう利用して繁殖するかを知るために、海洋構造が大きく異なる幾つかの代表的な繁殖島で、繁殖生態、洋上の索餌行動、栄養状態、ストレスホルモンの分泌変化などの基礎的な生態パラメータを測定し、繁殖集団間の適応度を比較しています。

そしてこれらの分析をもとに、同じ分類群に属するアホウドリ類などの希少性外洋鳥類の回復に必要な情報を探ろうと取り組んでいます。

オオナギミズナギドリ

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希少鳥類のDNA研究

生息数が少ない希少鳥類では、一般に遺伝的多様性が乏しい傾向が見られ、病気や環境変化に対する抵抗力が減少している恐れがあります。しかし、日本の希少鳥類ではこのような基礎的なデータが不足しています。独)水資源機構や兵庫医科大学の協力を得て、希少鳥類の血液や羽毛からDNA塩基配列を解読しています。このデータをもとに遺伝的多様性を明らかにし、希少鳥類の回復を妨げている問題を探っています。

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DNAバーコーディング

鳥類は動物の中で最も分類学的研究が進んでいるグループの一つですが、それでも時には種の同定が難しい場合があります。特に、形態が似通っている種同士や、幼鳥、体の一部分からの種同定は、分類の専門家でも同定が難しいことが多々あります。そこで、そのような時に役に立つのが「DNAバーコーディング」です。この技術は、ある特定の短いDNA配列と、証拠となる標本をもとにして種を簡便に同定する試みで、現在、世界中の研究機関で鳥類全種約1万種を対象として解析が行われています。山階鳥類研究所は、国立科学博物館と共同で、日本産鳥類種全種の解析を目指して、現在分析を進めています。

DNAバーコーディング事業における山階鳥研の取り組み


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