平成15年度山階芳麿賞授賞式・受賞記念講演と記念シンポジウム
「未来にはばたけNipponia nippon朱鷺」

平成15年9月23日(祝) 有楽町朝日ホール


●平成15年度山階芳麿賞授賞式
●受賞記念講演
「新しい生命科学的方法と絶滅危惧種」
第12回受賞者・石居 進 博士
早稲田大学名誉教授
●記念シンポジウム
「未来にはばたけNipponia nippon 朱鷺」
「トキのたどった道」 安田 健
「トキの人工繁殖に成功」 近辻 宏帰
「中国のトキの生態」 席 咏梅
「野外復帰への試み-コウノトリを例にして-」池田 啓
総合討論  コーディネーター 山岸 哲
(司会・松田輝雄 元NHKアナウンサー)

安田 健
山階鳥研研究嘱託

近辻 宏帰
前・佐渡トキ
保護センター長

席 咏梅
中国陜西省トキ救護
飼育センター主任

池田 啓
兵庫県立コウノトリの郷公園
研究部長

山岸 哲
山階鳥研所長

司会
松田輝雄
元NHKアナウンサー


シンポジウム開催の趣旨
山階鳥類研究所所長 山岸 哲
この度、山階鳥類研究所はシンポジウム「未来にはばたけNipponia nippon 朱鷺」を企画しました。トキと関わりのある石居進博士が山階賞を受賞されたことが、本シンポ開催の大きな理由であることはもちろんですが、山階鳥研がトキのシンポジウムを開催するのには、実は他にも理由があります。それは山階鳥研、特に創設者・故山階芳麿博士が絶滅に瀕するトキやコウノトリの保護に深い関心を寄せられていたことです。山階博士は日経新聞の『私の履歴書』(昭和54年、1979年)の中で、トキについて以下のように述べられています。
「(前略)日本のトキは自然増殖に任せているが、この5年間、1羽も増えていない。アメリカやカナダのように人工増殖をしなければ、絶滅するのは時間の問題である。(中略)昭和52年(1977年)にはアメリカのウィスコンシン大学で行われた希少鳥類の保護のための科学技術に関する国際シンポジウムに出席した。(中略)私はトキの現状について報告したが、世界中の学者からは、なぜ早く捕らえて人工増殖をしないのかと質問が集中した。(中略)それには人工飼育についての知識が必要である。そこでトキ類の人工増殖で最も成功しているスイスのバーゼル動物園を訪れて、鳥類飼育主任のワッケルナーゲル博士から飼育法を詳しく学んできた。この間に、スイスに本部のある「世界野生動物保護基金(WWF)」に資金を出してもらって、佐渡の新穂村清水平にトキ保護センターをつくり、飼育小屋や餌づけ場などを作ってもらった(後略)」。
このような経緯を経て、昭和56年(1981年)1月に、野生の最後の5羽が山階鳥研の標識研究室研究員の手によって捕獲され、保護センターに収容されたのでした。本シンポジウムでは、まず江戸時代の昔から「トキがたどった道」を安田健さんに簡単に紹介していただき、トキとはどのような鳥かを知っていただきます。続いて、上記の経過で捕獲収容されたトキたちについて、その後どのような飼育の努力が払われ、「トキの人工増殖に成功」したのかを、石居進さんのご講演と関連づけながら、近辻宏帰さんにお話いただきます。さらに、トキの野生復帰が現実味を帯びてまいりましたが、それにはトキが野外でどのような生活を送っているのかを知る必要があります。そこで「中国のトキの生態」について席咏梅さんに語っていただきます。最後に、野生絶滅したコウノトリを但馬の空に再び戻すプロジェクトを一足先に進めておられる、豊岡のコウノトリの郷公園での「野生復帰への試み」を池田啓さんにお話いただき、トキの野生復帰で何が問題になるのかを整理していただきます。
本シンポジウムが、トキだけではなく絶滅の淵に喘ぐ鳥類全体に、私たちがどのように向き合っていけばよいのかを広く考えてみる機会になるならば幸いです。



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